遅れに遅れた初出荷
　「2月開始予定、やはり3月、ごめんなさい、やっぱり4月……」初めての宮古島からの無農薬・無肥料野菜の出荷開始が当初の予定よりも遅れに遅れてしまいました。本通信が発行されている頃には野菜出荷に道がついていることを祈らずにはいられません。野菜をご予約のお客様にはメールでお知らせしてきたのですが、ここ宮古島では昨年の10月頃から雨と曇天の日ばかりが続いていて、日照時間が極端に少ないという災難に見舞われています。この冬は日本本土や北半球の北部では寒波と大雪、宮古島地方では何十年も体験したことのない悪天候の連続と、地球全体の気候変動が日増し深刻になっていることを感じざるを得ない事実ばかりです。先日から本誌でも連載いただいている生産者の川平さんを中心に、「雨に流されては種を蒔き、枯れては苗を植え……」を繰り返した冬でした。本来なら当地では最良の野菜栽培シーズンのはずだったのですが、お天気だけは川平さんの口癖でもある「工夫を重ねること」だけで解決することもできず、それでもなお簡単にこのプロジェクトが止められないのには、関係する人の決意があるからです。

決意を新たに
　私たちが宮古島で野菜作りをしていこうと決断したのは、原発事故前の昨年2月のことでした。魅力を挙げればきりがないほど宮古島で野菜生産をすることの価値がたくさんあることを見いだしたからです。これだけの無肥料野菜の適地でありながら、大きな壁になっていたのは、その流通のありかたでした。なにぶん日本本島からは何千メートルも隔絶した土地であり、飛び抜けて高くて不安定な物流事情が島を不自然なサトウキビと葉たばこだけが目に付く状態に変えてしまいました。サトウキビと葉たばこには政府から多大な補助金が出るうえ、台風にも比較的強いとあって、本来は多様性のある島なのに「助成金ずぶずぶ作物」が覆ってしまったのです。そして福島での原発事故が発生します。私たちが多難な中でも宮古島でのプロジェクトを続ける理由を野菜ご予約のお客様にメールでお送りしました。以下で、その内容をお知らせします。

だから、止められない
　『本テスト出荷については、実にタイトな状況の中で、少しでも早く素晴らしい野菜を食べていただきたいと、当初の「3年をかけてじっくり取り組む」という計画を震災とその後の事故を受けて2年半前倒しして取り組んでまいりました。
自然栽培家がたくさんいるわけでもない当地で、その可能性を島の皆さんに知っていただくためには、まず私たちが成功事例を示すほか、すすむ農薬や肥料による海洋汚染、基地の誘致に歯止めをかけることはできないと、すべてを見切り発車しております。

　ましてや台風がたびたび襲来する厳しい条件の当地ですから、台風時期にはお客様にご理解のうえご辛抱いただくしかないということは当初から織り込み済みでした。しかしここにきて、例をみない日照不足という地球規模の気候変動によってさらなる困難を突きつけられた次第です。

　それでもなお、私たちがこの事業に対して強い熱意を感じるのは、福島での原発事故がもたらした災禍が教えてくれること、つまり

　不都合なものは助成金漬けにし　た離島や過疎地方に押しつける　という強者の論理が常に動いて　いること
他人のお金に期待することは、受　け取る人の自由を奪うこと
一度誘致された「やっかいもの」　から自由になることは、災禍が起　きてもなお、屈服しなければ解決　すらできないという事実
過度な「消費者の都合再優先」主　義が、流通の過剰な複雑さ、見た　目を優先することで化学物質を　多用すること、極端な効率主義や　大量生産、ひいては生産者の生活　を脅かすことにつながっている　こと
国家というフレームよりも地域　の自立こそが、次の時代を開く　こと

　などについての学びを本当に生かしたいという一念があります。

　本会員募集の際には「安全な農産物の販売です」というような、ありがちなうたい文句を並べるつもりはありません。

　あくまでも、各々の立場を超えて生活のなかで連帯をし、ともに子どもたちにバトンタッチできる社会を作り出そうという運動の一環としての野菜流通でああること。また消費者も生産者も流通者も、お互いをよく知り、よく我慢してよく助け合う関係を作るための一石をお願いしたいと思っています。』

　ぜひ、私たちに読者の皆さまの力をお貸しいただきたいと思います。

プレマ株式会社の『宮古島プロジェクト』 宮古島の自然農法を推進し、島の健全な地下水と珊瑚礁を守り、お客様に安心と安全を届けます。