実はここ数年、国産推進とは別の「なんだ、国産じゃないのか」という国産至上主義的雰囲気を感じることが増えました。世界の多くの地域が、自国の勝ち負けを最大の目的とし内向きになり、そうならざるを得ない時代だからこそ、過度な内向きさにどことなく怖さを感じています。

かつてエコビレッジで週末自給自足生活にトライしていたフェアトレード未経験の私は、「自分たちの手でできることが増える＝持続可能性増＝安心増」とどこか無意識に捉えていました。それゆえ、実は開始当初「輸入」という行為に、少し抵抗を覚えたこともありました。

しかし、輸入事業のなかで多くの出会いとさまざまな成功失敗を経て、いつしか抵抗を感じることはなくなり、今では、フェアトレードを前提とした貿易は、自給と同様に「安心」の手段になりうると感じています。一般的な貿易とフェアトレードとの間にある、微妙だけど大切な違いを経験したことで、地球上に存在する多様性を信頼し、不安定ながらも相互依存することもまた「安心増」となることを、体感として掴みつつあるからだと思います。

フェアトレードの狭義の「フェア」は、認証で目に見える形にすることも可能で、特定の立場の人々や環境を搾取するような状態で作られていないか、を見極め、生産国の人々や環境の持続可能性を保証しようとすることを意味しています。例えば、カカオを例にすると、カカオ農園の環境が安全で、働いている人々に暮らしていけるだけの報酬が渡っているかどうか、を見極め、その条件が満たされてないものは買わないという選択をすることです。

しかし当然ながら、「フェア」である大前提のうえで、売り手には売り手の、買い手には買い手の事情があります。具体的にそれらをお互いに表現し、ときには超えるべき課題（例えば、豆がかけ過ぎているんだけど、どうにかできないかなど）を通じて、生々しいやりとりのなかで、理解し協力し合うプロセスにより生まれる互いへのリスペクトが、互いの関係性を対等で持続可能なものへと育ててくれているように感じます。

取り組み方次第で貿易によって生まれるこのような互いへのリスペクトは、小さな点や線でしかありませんが、平時には商品を通じて互いの生活を豊かにしてくれますし、危機を迎え難しい選択を迫られたときには、より人間らしい選択をする一助になり得ます。一朝一夕には育たない目に見えない価値だからこそ、国産至上主義的雰囲気を感じつつある今だからこそ、歩みを止めることなく、一歩ずつ継続していこうと改めて思っています

海外事業部
久野 真希子（くの まきこ）

最近、抹茶を自宅と野点で楽しむことを覚え、はまっています。茶道としてのお茶を一時期習い、中断していたのですが、野生児気質の私には野点がぴったりだったようです！