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くま先生のすこやか診察室

「子どもも親も、家族みんなの笑顔と幸せのために」総合医療くま先生からのメッセージ

統合医療やまのうち小児科・
内科医師

山内 昌樹 (やまのうち まさき)

小児科医として勤務していたが、西洋医学の素晴らしさを感じつつ心から望む医療と現実のギャップに悩み、軽度のパニック障害を経験。YHC矢山クリニックで小児科 を担当し、病気の真の原因を学ぶ。お母さんの自己肯定感を取り戻すことが家族みんなを笑顔にし世界を平和にすると確信している。
〒849-0915 佐賀県佐賀市兵庫北5丁目8-7-2
0952-33-8500
http://www.yamanouchishounika.jp/

善悪を超える

投稿日:

このコラムで、以前、「だめな私のままでもいいよ」「あれもこれもすべて、私の愛おしい人生の瞬間」というアファメーションをご紹介しました。この2つのアファメーションは、とても効果が高いようです。素直に実行している患者さんは、少しずつ楽になっていっているようです。後者は「あれもこれも(問題だと思っていることも)すべて、愛おしい人生のワンシーン」など、自分にしっくりくる言葉に変えても良いと思います。

なぜこれらの言葉が心に効くのか、そのポイントを説明したいと思います。この2つのアファメーションに共通しているのは、自分が過去に受け取ってきた「母親の価値観」を壊す言葉になっているということです。子どもは物心がつく前から母親の言動を観察しています。そして、母親の機嫌が良くなることはやっていいこと、母親の機嫌が悪くなることはやってはいけないこと、という基準が幼い心に刷り込まれます。その基準をつかって、自分のなかに正誤や善悪の価値観ができあがります。

しかし、本来、この世界には「絶対に正しいこと・間違っていること」も「絶対に善いこと・悪いこと」もありません。人間世界の約束事としてやらないほうが良いことや、やったほうが良いことがあるだけです。もし、この世が動物だけの世界だったとしたら?弱肉強食も当たり前だし、仲間同士の争いもあります。共食いだってあります。台風や地震や火山の噴火など、天変地異もあります。そのためにある種族が滅んだとしても、その出来事に良いも悪いもありません。起きていることが、ただ起きているだけです。人間だけが、それぞれの出来事に、正誤、善悪の価値を付けて勝手に判断したりレッテルを貼っているのです。

知らないうちに人を裁いている

私たちの生活を振り返ってみたとき、すべての出来事を自分の価値観をもとに、勝手に裁いていることに気づくことができるでしょうか? あの政治家(官僚)が悪い。あの上司(部下)はなにもわかっていない。夫(妻)がワガママだ。子どもが言うことを聞かない。先生(友達)が優しくない。そう思ってしまうことは仕方がないことです。でも、そういう価値観をその対象に感じてしまうのは自分だけかもしれないとか、そう思わない人もいるかもしれない、などと想像することができるでしょうか?

ちょっと横道にそれますが「〜のせいで」と思ってしまったとき、「〜のおかげで」という言葉に置き換えてみると視点が変わります。

閑話休題。このように対象を裁くことで、実は、自分自身のことも裁いています。例えば「あーめんどくさいなぁ」と感じたとき、「ダメダメ、これはちゃんとやらなくちゃ」とか、「あの人のせいで、こんなことになってしまった」と感じたとき、「ダメダメ、人のこと悪く思ったらバチが当たる」などと言って自分の気持ちを無理やり前向きにしようとしたり、良い人にならなければと思ったりしていませんか? そう思うのが当たり前すぎて、自分の本音にダメ出しをしていることに気づけなくなっているかもしれません。こういう脳内思考は、「そのままの自分でいてはいけない」という自己否定を無意識にしていることになります。

最初にご紹介した2つのアファメーションは、物事を裁く基準となっている善悪・正誤を超えた価値観を取り戻す働きがあります。エゴを手放す働きがあるといっても良いかもしれません。ちょっとやそっとで価値観が変わるわけではありませんが、地道に続けていると、少しずつ価値観の変容が起こります。世界をありのままの姿で見られるようになってきます。あるがままの愛と美しさにあふれた世界に気づけるようになると、緊張がとけて免疫力が上がります。

- くま先生のすこやか診察室 - 2024年11月発刊 vol.206

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