私たちの頭のなかはいつも忙しくなにかを考え続けています。しかも、思考し続けていることに無自覚です。ネガティブな思考が湧き続けているとき「なんとかして止められないかな」と思うものの、なかなかその思考から離れることはできません。思考した結果、さらにいろいろな問題点に気づき、それにどう対処しようか、もしこうなったらどうしよう、などとどんどん思考が膨らみ、不安が増大していきます。思考を止めようと思っても、止めることは困難です。思考は自分でおこなっているように感じますが、実は自分で考えているのではなく、無意識に思考が湧いてくるものなので、コントロールは難しいのです。では、どうしたら思考に続く苦しい感情から逃れることができるのでしょうか。
まず「思考している」ということに気づく必要があります。今、自分がなにを考えているか? 多くの場合、考えていることが当たり前過ぎて、自分の思考に改めて気づくことが難しくなっています。気づくきっかけとしては、気分が悪い、苦しい、などのネガティブな感覚や状態がわかりやすいかもしれません。思考に続いてネガティブな感情が湧いてくることが多いので、そのネガティブな感情に伴う体の感覚に気づくことで、思考のしっぽを掴むことができます。体の感覚は、痛みや胸のモヤモヤ、喉の違和感、動悸、お腹の痛みや張り、立ちくらみ、トイレが近い、しびれ等々の症状として現れることがあります。これらの症状に気づいたとき、なぜそのような思考に至ったのかを振り返ってみる、という練習をすることで、思考に気づきやすくなります。また、このコラムで毎回アファメーションをお勧めしていますが、同じ言葉を何回も繰り返すことで、意識がアファメーションの言葉に集中するので、考え事を減らす効果も期待できます。考え事が減ると、考え事に気づくことが簡単になっていきます。
ネガティブな思考を否定しない
次の段階は、思考を認めることです。考え事は安易にコントロールできるものではないことはわかっていただけたと思います。考える内容もコントロールは難しいものです。しかし、普段、私たちは無意識に自分の思考を否定したり、修正したり、ツッコミを入れたりして、悪い思考を正しい思考に導こうとしています。その動機は、いい人間になるため、人に迷惑をかけないため、弱い自分を認めたくないから、悪い考えでバチが当たるかもしれないと思うからなどさまざまです。例えば、「あの人がいなくなってしまえばいいのに」と思ったとき、そんなふうに思うのはいけないことだ、ネガティブなことを考えるとネガティブを引き寄せてしまうかも、バチが当たるかも、などと考えてしまうかもしれません。でも、まずは認めてあげましょう。どんなネガティブな思考でも、思ってしまったことはそのまま認めていいのです。
思考を認めたうえで、さらにその思考と、そう思った自分自身を肯定しましょう。どんなにネガティブなことを思考したとしても、そう思ってしまった自分自身を認めて、肯定してほしいのです。以前にも紹介したことがあるアファメーション「そうだよね、そう思うよね(そう思ってしまうよね)」を、思考に気づくたびに、繰り返し唱えましょう。本当はすべての思考に気づき、肯定したいところです。実際には難しいのですが、すべてを肯定する状態に近づくため「そうだよね、そう思うよね」という言葉を、あらかじめずっと唱えておくのがコツです。いつどんなときでも、自分の思考を肯定するぞという準備状態を作っておくと、ネガティブな思考が湧いてきたとき、即座に「そうだよね、そう思うよね」と言うことができるようになります。そうしているうちに、思考したとしても、それが苦しい感情に発展していくことが減っていくはずです。