「病院の規則ですから」
生まれ出た赤ちゃんは、母の胎内でためた老廃物を排泄・デトックスし、
一旦体重を減らしたあとで、経口で栄養をとり、どんどん太っていきます。
低体重ですが健康なうちの子は、立派に胎便を排出し、
体重の下限値を10グラム割りました。
そして、入院を通告されました。
私は拒否しました。
なぜなら体重が減るのは自然なことだから。
すると、若い女性の医師がやってきて、規則ですから、と繰り返します。
押し問答になりました。
その足で子どもを連れて退院することも考えました……が、折れました。
10グラムなんてすぐに増える。
施設の都合上、一度入院したら明日の朝までチェックアウトできないとして、
今晩ひと晩だ、と自分に言い聞かせました。
折れた理由の一つは、制止を振り切ってその足で外出できるほど、
体力が回復していなかったからです。
寝不足の状態でホルモン剤や抗生剤を入れられたあと、
3時間ごとの授乳で歩き回り、睡眠時間どころか横になる時間も足りない生活。
すでにフラフラでした。
そして一番大きな理由。
うちの子は、陣痛促進されたぶん、おそらく一週間早く生まれています。
月が満ちていないぶん、何かが弱いかもしれない。
それがどこまで行っても私の弱みになるのでした。
初めて出会う赤ちゃん
ここで改めて、私の入院した大病院が特殊なのではなく、
低体重でも母子同室を認めた時点で、実はかなり優しい病院だとお伝えしたいと思います。
うちの子は、体重が足りないだけなので、NICU(新生児集中治療室)ではなく、
普通の入院施設に連れて行かれました。
その瞬間から、3時間ごとに、ナースステーションより随分遠い、
赤ちゃんの入院施設まで授乳しに行くことになります。
もちろん病院にも配慮があり、「通うのが辛いからミルクをお願いします」と、
お任せすることもできます。
……私にはできませんでした。
多くの母にはできない。
だから、産後間もない、休んだ方が良い母たちが、母体に鞭打ち、
夜に何度も通っては、聖母のような表情で赤ちゃんを見つめていました。
入院施設の赤ちゃんを初めて見舞う(授乳する)時間となりました。
骨盤ベルトで骨盤をきつく締め、長い距離を、手すりにすがるようにして歩きました。
入院施設の入り口は、出入りを監視するため、厳重に管理されています。
手続きをして、中に入りました。
……入った途端に、目が見ることを拒否しました。
私は目がいいです。
一瞬にして場を読み取り、衝撃のあまり、直感的に認識を止めました。
そこには、出会ったことのない赤ちゃんがいました。
ベテランの女性産科医から、かつて聞いた言葉が頭をよぎりました。
「技術の進歩も本当に良し悪しで、今の技術だと、殺してあげられないのよね~」
頭が大きすぎる子ども、顔の一部が足りない子ども。
常に痙攣している赤ちゃんもいました。
最後まで怖くて直視できなかった……人の姿をしていない子どももいました。
その子はおそらく退院することがない。
父母ともに度々お見舞いに来られてましたが、
お二人ともとても明るく、母はとても美しい方でした。
以前この連載で書いた、今回の経験がなければ一生涯知らなかったであろう
「重い現場」がそこにありました。
お産に万が一はある。
病院側が常にそこから話を始める、「リスク」も現実の一部なのです。
それでもやはり、その特殊なリスクを前提として、
すべてのお産を管理してはいけないのだと、私は思います。
続きます。
今回、字数の都合で書けなかった部分はブログに書きますね。
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プレマ株式会社
東京スタッフ
望月 索
(もちづき さく)
8歳、5歳、1歳の三姉妹の母。
人一倍不摂生な出版仕事人が妊娠、出産、育児と経験を積むうちに、
気づくとハードコアな自然派お母ちゃんに。
編集、ライター、プレマの東京スタッフ。
編著に『子どもを守る自然な手当て』、
訳書に『小児科医が教える 親子にやさしい自然育児』など。
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