健康的な生活の秘訣、それは季節感を大切に自然の中で生かされていることを感じながら、日々の生活をきちんと送ることです。
お花見のシーズンになりました。桜の花を塩漬けにして桜餅やお菓子に混ぜてみたり、お料理にトッピングして彩を添えたりと、季節感を表現する知恵には感心します。
腐敗を発酵に変えた知恵
ある季節にしか収穫できないものを保存するため、腐敗するものを「塩」の力によって発酵させる。顕微鏡もなく微生物の存在さえわからなかった時代からの知恵には驚かされますね。
ぬか漬けでは米ぬかからビタミンB群が野菜に移り栄養価が高まるだけでなく、発酵を支える微生物のおかげで腸内環境も整うので、漬物はきちんと後世にも残していきたい食べ物です。
近年、減塩運動のせいで「塩」が遠ざけられる傾向にあります。漬物にしても、塩分を減らし、その代わりに保存料や食品添加物まみれの調味液に漬けただけの浸物が増えています。塩分の摂り過ぎ以上に添加物の影響が心配です。実のところ、塩分が増えると喉が渇いて水分を摂ろうとするので、塩分の摂り過ぎというのは考えにくいものです。また、一言に「塩」と言ってもミネラル分を含んだ自然塩を使うように心がけていれば、さほど心配はいらないものです。
料理とは、理を料ること
筍の天ぷらを食べると顔に吹出物が出るという人がいます。筍という地面から出て「上」へと成長していく勢いの強いものを「揚げる(上げる)」という料理をすることで、さらに「上」へと向かう性質を強めて、顔という上の部分から皮膚表面から出ると考えることができます。いずれにしても、この季節の吹出物は「出る」というより「出す」という体の反応と捉え、自然の力を借りたデトックスと考えればよいでしょう。ただし、出す勢いが強すぎることもあるので、揚げ物ではなく煮物などの料理法でいただくようにするほうがいいかも知れませんね。
このように春には「上」へと向かう気の力が働きますので、頭に血が上りやすい季節です。だからこそ、きちんと家庭で料理されたものをいただきたいものです。食生活のバランスが崩れるとイライラと血が騒ぎ、自律神経のバランスが崩れがち。自律神経の乱れた状態が長く続くと、この先の季節で五月病と言われるうつ傾向の症状が出やすくなってしまいます。
料理とは「理(り)」を「料(はか)る」こと。「理」とは、道理、自然の摂理。「料る」とは、「米を斗(ます)ではかる」と書くように、きちんと調えること。自然にあるもの・季節のものを、水と火の力、塩加減、ときには時間や圧力などを使って調和させていくことを料理というのです。
ごはんとおかず
塩分が過剰と叫ばれる一方で、ビタミンやミネラル、カルシウムなどの栄養素は「不足」と言われてきました。その代表格が「一日に30品目食べましょう」のスローガン。この「30品目」という数字は、主食が白米であることがベースとなっています。同様に最近いわれる「糖質制限」による米食離れについても、白米が基本的な考えなのです。
お米にきび、あわ、ひえ、麦などの雑穀を入れたり、白米でなく胚芽米や玄米でいただいたりすることで、ごはんの栄養価が上がって主食を充実させることができます。「一汁一菜」や「一汁三菜」というように、主食と副食の役割があるのも和食の特徴です。栄養のことで迷いそうなときは、まず主食であるお米を見直してみることから始めるといいでしょう。
春の食生活改善
春になると緑黄色野菜が出回るようになります。また、菜の花、わらび、ぜんまい、ふきなどの山菜の季節。これらの季節の旬のものをきちんと料理していただくようにしましょう。そして、ごはん(米)、味噌や漬物などの発酵食品を食べる。できる限り安全な食品を選ぶようにする。よく噛んでいただく。
4月は年度の始まり、生活環境が変わる人もおられることでしょう。しっかりと地に足をつけて、当たり前のことを大切にしたいものですね。
執筆 圭鍼灸院 院長 西下 圭一 病院勤務を経て、プロ・スポーツ選手からガンや難病まで幅広い患者層に、自然治癒力を引き出していく治療を特徴とする。 鍼灸師、マクロビオティック・カウンセラー、リーディング・ファシリテーター。 |