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特集

インタビュー取材しました。

世界を楽しくする、絵のマジック
「こどもアトリエ アトリエ・リュミエール」主宰 鈴木 あきこ氏 インタビュー

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毎月『らくなちゅらる通信』の表紙に、エッジが利いていながらも温もりのあるイラストを寄せてくださる鈴木あきこさん。自らの作品づくり、また育児と並行しながら、20年前から「こどもアトリエ アトリエ・リュミエール」を主宰しています。子どもと作品を作りながらも、描くだけに止まらない絵の魅力を伝えていきたいという鈴木さん〝絵〟が切り拓く可能性について、話を聞いてみました。

「こどもアトリエ アトリエ・リュミエール」主宰
鈴木 あきこ(すずき あきこ)

京都市生まれ。同志社大学文学部文化学科哲学及倫理学専攻卒業後、パリへ留学し油絵とデッサンを学ぶ。京都と宇都宮で「こどもアトリエ アトリエ・リュミエール」を主宰し、また学校やイベント等でも講師として活躍。画家として自身の作品も発表している。著書に『発想力が豊かになる おえかきアート』『いろいろ へんしん』(ともに主婦の友社)などがある。
atelierlumiere.tumblr.com Instagram:akiko_lumiere

育児に奔走しながら始めた
子ども向けの造形教室

――毎月『らくなちゅらる通信』の表紙の絵を描いていただいている鈴木あきこさん。絵本や児童書を刊行されるなか、京都と宇都宮で、子ども向けの造形教室を主宰しておられます。

鈴木 「こどもアトリエ アトリエ・リュミエール」を立ち上げたのは2001年。あれから、もう20年も経ったのかと、なつかしく思います。小さいころから画家を志して、パリに留学もしました。しかし結婚、出産、そして育児も経験するなかで、自分の作品を作ることが難しくなっていたのが、あのころでした。そのタイミングで、「アトリエ・リュミエール」の活動を始めました。

――家事や育児が大変ななか、いままで続けてきた自身の創作活動ではなく、子ども向けの造形教室を立ち上げようと思ったのは、どうしてなのでしょう?

鈴木 出産する前はアルバイトなどしながら、自分の作品を描く余裕がありました。けれど上の子が生まれて、二番目、三番目となると、育児だけの生活になっていきます。それでも公募展に応募するために、子どもをおんぶしながら、絵を描いていました。

けれども、わが子と接しているうちに、いままでとは違う興味が湧き始めます。一緒にお絵描きしながら遊んでいるうちに、子どもの絵の面白さを実感しました。子どもの描く線の自由さに心から魅了されました。

たとえば「お母さんの顔を描いてみて~」と言うと、こちらが予想しないような、ユニークな輪郭の似顔絵を描いたりします。大人が想像できないような絵をどんどん描くから興味がつきません。なにより一番すごいことは、子どもの絵を通してその子の見ている世界を私も体験できることです。子どもと絵を描くことの楽しみを知ったのが、「アトリエ・リュミエール」立ち上げの原点です。

あとは絵本の影響も大きかったかもしれません。私はそれまでは児童向けの絵には、あまり詳しくありませんでした。でも、わが子に絵本の読み聞かせをするなかで、そのすばらしさに気づきます。私が思っていた以上に、タッチも色彩も構図も、バラエティに富んでいました。子どもが関心を寄せる絵とはなにかに興味をもち、絵本も描くようになります。

――そうした経緯で立ち上げた「アトリエ・リュミエール」は、京都と宇都宮で開催されるという、ちょっとユニークなスタイルですね。

鈴木 私は生まれ育ったのが京都で、結婚してから宇都宮に移り住みました。最初は宇都宮で教室を開くのみでしたが、3年前に京都の実家を改築したのを機にこちらにもアトリエを設け、教室を開きました。子育てもひと段落したので、いまは月のうち20日間は実家に滞在して、子どもに絵や造形を教えています。

――鈴木さんが、絵の道に進もうと思ったきっかけはなんでしょう?

鈴木 小さなころから、いつも絵を描いていました。実家は築80年を迎えたために改装しましたが、幼かった私は、その壁じゅうに絵を描いていました。

――美術の学校に進まれたとのお話でしたが、高校を出て芸大に入学されたのですか?

鈴木さんが手がける本は、絵本から児童書、作画の指南書まで多岐に及ぶ。韓国で刊行されている作品も

教室に通う子どもたちが、
自分の可能性を広げてくれる

鈴木 いえ、大学は文学部の哲学専攻です。芸大進学を目指して、高校の3年間、受験のために絵の学校に通っていましたが、最後の最後で父親に反対されました。公務員だったので、わが子も安定した仕事に就いてほしいと願っていたようです。また兄弟の一番上だったため、長女としての責任も感じて、父親の意見に従いました。

ただ大学に入っても、絵は描き続けました。そして創作を続けるなか、「卒業したら、きちんと絵を勉強したい」との思いが強くなっていきます。

当時、私が影響を受けていたのが、スイスの画家パウル・クレーと、フランスの画家・ピエール・ボナールでした。ともに19世紀から20世紀にかけて、活躍した人物です。

――パウル・クレーと聞いて、『らくなちゅらる通信』の鈴木さんの絵が、パッと思い浮かびました。丸や三角、四角といった図形を組み合わせた構図、あとは色の使い方に、その影響がみられるような気がします。

鈴木 私にとって、クレーの作品は絵をつくるうえでの技法やアイデアの宝庫です。いつも、参考にさせてもらっています。

一方で、ピエール・ボナールは、私が絵の色彩を考えるときに、いつも思い浮かぶ画家です。私がパリの学校で美術を学びたいと思ったのは、彼の絵から受けた影響も大きいです。留学する前も今も、私のイメージするパリらしい色彩といえば、彼の作品のものです。

――パリへの留学は、いつ決意されたのでしょう?

鈴木 高校生のときから、ヌーヴェルバーグ(1950年代から60年代前半にかけてのフランスで、商業映画ではなくインディペンデントな映画制作をおこなった若手グループの映画)の作品が好きで、その影響もあり、大学生のときに何回かパリを旅行しました。生まれ育った京都と同じように、歴史ある建物が立ち並ぶさまと、なによりそれほど広くない市域に、ものすごい数の美術館があって、すっかり魅了されてしまったんです。

大学卒業後、しばらく社会人生活を送ってお金を貯め、フランスへ渡りました。最初はブルゴーニュのディジョンという街の語学学校でフランス語を勉強して、その後、パリの専門学校で3年間、美術を学びました。

それまでに自分に欠けていると感じていたデッサンや構図、色彩など基本的な技法を一生懸命、習得しました。また学生料金でルーブルやオルセーをはじめ、さまざまな美術館に低料金で入館できるので、何度も通って勉強をしました。学生なら、オペラ座にも驚くほど安い料金で入れたので、パリでの3年間は、とにかく芸術三昧でした。

ただ日本から持ってきたお金もすぐに底をついてしまったので、学生ビザで許された範囲でアルバイトをしながら生計を立てるのは大変でした。フランスにいたときは、どのようにして、絵の勉強と生活を両立させていくか、とても悩んでいました。
あのころは、自分がどのような絵を描いていったらいいのか、もがいていました。けれども子育てを経て、子どもに絵を教えるようになったいまは、常に子どもたちに提案するアイディアを考えたりするうちに、私自身のなかにもイメージが幾重にもかさなり、また子どもたちからも発想を受け取ったりするので、作風が広がりました。

――その後、日本に帰国して結婚し、「アトリエ・リュミエール」の活動も始まりました。20年間、さまざまなお子さんに教えるなかで、貫き続けた信念はありますか?

鈴木 「紙一枚のなかでは自由になれる」という楽しさを伝えることです。学校の勉強、算数や理科にはルールがある。でも絵は、なにを描いたって自由です。自分でルールを決めて、いやルールなんてなくても、思いのまま描けばいい。まだなににも縛られていない、子どもの感性を受け止める対象としては最適なんです。

子どもの想像力を狭めないように、よく観察して、最小限の指導に止めるという鈴木さん。「紙のなかでは自由」がモットー

自分の作品が認められれば、
自分のことも大切に思える

紙に向かっているかぎり、なにをしても大人に怒る権利はない。どんな子でも、スッと入っていける芸術領域が絵です。

もちろん、きちんと描けるようになるための基本は教えます。赤、青、黄の3原色と白で、すべての色を作れるので、これを使って、できるだけたくさんの色を作ってもらう。また複雑なかたちのなかから単純なかたちを探したり、逆に単純なかたちから複雑なかたちを見出すことも絵を描くうえで大切です。

あとは考える力、物事をよく観察する能力を養えるように、毎回のテーマを考えます。普段とは違うものの見方ができるようになると、絵の構図も、日常の発想力も磨かれるので、その大切さも伝えていきます。

たとえば以前、「なにかのかたちのなかに、まったく違う世界を描こう!」というテーマで制作したとき、ひとりの子が馬を描きました。そしてその馬のなかには宇宙が描かれていました。そして背景は、海のなか! もちろん実際にはありえない光景です。でも紙という二次元の世界から、宇宙や海といった多次元の世界へと発想を展開することも可能なんです。小さいときに縦横無尽に自由な思考を巡らすことは、絵以外の部分でも役立つはずです。人と違っても大丈夫、たとえお父さんやお母さんに口出しをされても、画用紙の前では自分の好きなように手を動かすべきとわかれば、ますます絵を描くことは楽しくなります。

またご両親にも、お子さんの作品を額に入れて飾ってくださいとお願いします。額に入れることは、作品に対する尊敬の表れです。立派なアートがある空間を作ってあげることで、子どもは自分の作品を客観的に観察します。

完成してから時間が経つと、より絵を客観的に見られるようになります。これは子どもにかぎらず大人も、自分の作品がしっくりくると、不思議と自分のことも大切に思えてくるのです。絵を描いていくと色や形の組み合わせで、偶然に生まれた美しい表現に出会ったりします。 その発見を子どもたちに体験してもらいたい。私は、この感覚がたまらなくて、ずっと絵を描くことに夢中になっています。絵を描くことは、自分と自分に関わる世界を考える作業でもあります。だからこそ、子どもたちには自分の周りの世界を認識していく手段の一つとして絵を取り入れてもらいたいと考えています。絵を描くことで、世界が愛おしいものに感じられてくるのです。

自分の好きなかたちや色を画用紙にのせることで、毎日が楽しくなります。最近では大人の造形教室も開催しているので、絵を描くことを通して、たくさんの方々と生きることを楽しんでいきたいです。

こどもアトリエには本誌の表紙のイラストがずらり。毎月のテーマに合わせて、精巧に描かれていることは周知の事実

- 特集 - 2021年1月発刊 vol.160

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