「この人、なんだか苦手だな……」と思ったこと、だれもがあるのではないでしょうか。職場でもプライベートでも、波長が合わない相手がいると、それだけでストレスを感じます。しかし、その「苦手意識」、本当に相手の性格や態度、波長のズレが原因なのでしょうか?
じつは、多くの場合、「苦手」と感じる原因は相手ではなく、私たち自身が無意識に緊張していることにあります。この緊張が、人間関係に大きな影響を与えているのです。
緊張が生む「苦手意識」
たとえば、初対面の人と話すとき、構えてしまうことってありませんか?また、上司や目上の人と話すとき、普段通りに振る舞えず、ぎこちなくなる経験なども。これは、相手が「苦手」だからではなく、自分が無意識に緊張しているからなのです。
緊張しているとき、身体はこわばり、呼吸は浅くなっています。その状態では感覚が鈍り、相手の本心や状態を感じ取るのが難しくなります。つまり、相手のことがわからない状態で意思疎通を図ることになるため、不安感が強くなり、苦手意識が強化されます。
また、緊張すると思考が優位になり、過剰に解釈を加えたり、相手の言葉を敏感に受け取ったりします。結果、「冷たい」「否定された」と感じたとしても、実際には相手の態度が変わったわけではなく、緊張が自分の受け取り方に影響していることが多いのです。
さらに、緊張すると表情が硬くなり、声のトーンが暗くなります。話し方も素っ気ない印象になりがちです。相手は「この人、話しづらいな」「もしかして嫌われてる?」と感じ、距離を取ってしまいます。その結果、ぎこちない空気が生まれ、「やっぱりこの人とは合わない」と思い込んでしまいます。これが、苦手意識の悪循環です。
「苦手」を手放すためにできること
では、この悪循環をどう断ち切ればいいのでしょうか? 大切なのは、「相手を変えよう」「遠ざけよう」とするのではなく、「緊張を味方につける」ことです。意外に思われるかもしれませんが、緊張を解消しようとすると、かえって心は余計に緊張してしまいます。あえて緊張を無理にほぐすのではなく、そのまま受け入れ、活かすことがポイントです。
シンプルですが、驚くほど効果的な方法をご紹介します。
◎ステップ1:苦手意識を感じたら、自分の身体に意識を向け、一番気になる場所に手を当てる(難しい場合は、意識だけを向ける)。
◎ステップ2:心のなかで「なにを感じる?」と自問し、そのままを答える(例:かたい、重い、モヤモヤ、どきどき、イライラなど)。
◎ステップ3:その感覚を感じながら、ゆっくり呼吸する。
吐く息とともに感覚が和らぎ、緊張が解けていきます。身体がゆるみ、呼吸が深まると、思考も落ち着き、心に平穏が戻ります。
苦手な人が「普通の人」に変わる瞬間
この方法を試すと、これまで「苦手」だと感じていた相手に対して、不思議と違う印象を持つようになります。「思ったより話しやすいかも」「実は悪い人じゃないのかも」と感じることが増えるでしょう。そうなれば、その人はもはや「苦手な人」ではなく、単に「普通の人」です。
人間関係は、私たちの身体の状態によって大きく変わります。だからこそ、相手を無理に変えようとするのではなく、自分の状態をリセットすることが大切なのです。次に「この人、苦手だな」と感じたときは、ぜひ一度試してみませんか。それだけで、関係が少し楽になるはず。苦手は身体で解消できる。ぜひ覚えておいてくださいね。