食の壁を超えるヘルシーなジャンクフード①
私がプレマルシェのフルサービス型の飲食店をスタートしたいと思ったきっかけは、自然食屋の知識とノウハウを活かした健康的なジェラートを作り始めた9年前まで遡ります。それまで、飲食店の経営はもとより、飲食店でのアルバイトの経験すら一度もない私でしたが、ジェラート店がまたたく間に高い評価をいただき、また世界コンテストでも入賞できてからは、この「食べると体温が上がり、血糖値がほとんど上がらない不思議なジェラート」の設計思想をそのまま他の飲食物にも広げていきたいと考えるようになりました。
ならば、自然食原理主義者の皆さんが『絶対に身体にいいはずなどない』と断言するアイスクリームの次に着手するべきはハンバーガーだろうと考え、そこにメスを入れて、常識を覆すことを試みることにしたのです。私は教条主義的な物言いや、断言されるのが好きではありませんので、私がアイスクリーム屋を開店したときにあちこちから言われた陰口を、さらにもっと大きく激しくなるように挑発してみたい気になりました。つまり、『中川信男は、自然食やマクロビオティックに真っ向から対抗して、頭がおかしくなってジャンクフード(ゴミのような食べ物)ばかりを売り始めた』と言われる方向を自ら目指したのです。他人を非難することはだれにでもできますが、その非難はまったく的はずれで、たとえ見た目がジャンクフードでも、心身に力を与える食事は作れるはずだという確信が先にあり、レシピはあとからついてくると信じていたからです。
ベルリンでの「苦行」
私は当時、2回目のイタリアのジェラート国際コンテストに行く日程が決まっていました。そのコンテストのあとに、そのまま陸路でドイツのベルリンにいき、あちこちでヴィーガンバーガーを食べ歩いて、レシピを構想することにしました。ベルリンではヴィーガン食が大きく広がっているムーブメントの真っ最中で、約8年前でもヴィーガンのバーガーが食べられる場所が20箇所以上ありました。
ありがたいことに、イタリアではまたコンテストで入賞することができ、トロフィーを大事に抱えたままベルリンに到着、3日間の滞在でおよそ12店舗のバーガーを食べ歩きました。はっきりいって、これは苦行そのものです。味がおいしければいいのですが、ベルリンのヴィーガンバーガーで「これはうまい!」と思うものはひとつもなく、特にソースの味が酷いのです。パティが植物性であるのをごまかすために、ソースの味がとても濃く作られていて、さらには非常にしょっぱくて甘いのです。うまみという概念はまだ欧州には広がっていない時期だったこともあり、うまみ以外の味覚刺激要素、つまり塩味、甘味、酸味、苦みの4つのうち、塩味と甘味が異常に強く設計され、さらにドイツということもあって量が多く、食べること自体がとても辛い経験になりました。ただ、おいしくない味も連続して経験し続けると、なにがまずさの要因かの共通項が浮かび上がってきました。それは、卵を使わないマヨネーズもどきの味が際立って酷いことでした。ケチャップはもともとトマトと塩、スパイスくらいで動物性素材を含みませんので問題はないのですが、肉のうまみを補うためにマヨネーズ的なものでなんとかしようとした結果が、むしろ裏目に出ている感じです。
帰国後に国内の植物性だけのマヨネーズも各種食べてみましたが、やはりどれもおいしいとはいえない味です。私は「このマヨネーズを、劇的においしいものにし、さらに身体を元気にするスーパーフードだけで作り出せたら、味も栄養も、エネルギーも整う」と考え、そこから開発に着手しました。ソースを作るのはジェラートを作るのと共通項が多いので、おそらくうまくいくだろうという根拠のない自信を胸に、帰国の途についたのです。【続く】
