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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

申請保護の原則

投稿日:

前号に引き続き、生活保護法について取り上げます。

前号は、生活保護法の4つの基本原理を取り上げましたが、これとは別に、生活保護法には、保護の原則と呼ばれるものが4つあります。今号は、その原則の一つである「申請保護の原則」(法7条)を取り上げたいと思います。

申請保護の原則

生活保護法7条は、「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる」と定めています。

すなわち、ここでは、原則として保護は申請に基づいて開始されることが規定されています。したがって、生活保護が必要な人は、原則として、まずは申請をすることが必要です。

また、申請できるのは、保護を必要とする本人、その扶養義務者または同居の親族とされています。

水際作戦

この関係でしばしば問題となるのは、保護の申請をしようとして福祉事務所等の窓口に行った方が、窓口の職員に、「働けるのだから、まずは仕事を探してください」、「親族に援助してもらってください」などと言われて、追い返される例です。福祉事務所等で採られるこのような手法は、「水際作戦」などと言われます。

実際に、裁判になった例もあります。例えば、特段の資格もなく再就職が難しい高齢の方が、窓口で、就職活動をすることを強く求められ、保護の適用についての助言も受けられず、申請を断念させられ、その後に自殺をしてしまったケースがありました。

このケースで、裁判所は、「生活保護は、憲法25条に定められた国民の基本的人権である生存権を保障し、要保護者の生命を守る制度であって、要保護状態にあるのに保護を受けられないと、その生命が危険にさらされることにもなるのであるから、他の行政手続にもまして、利用できる制度を利用できないことにならないように対処する義務があるというべきである」と述べ、さらに、保護の実施機関において、「生活保護制度を利用できるかについて相談する者に対し、その状況を把握した上で、利用できる制度の仕組について十分な説明をし、適切な助言を行う助言・教示義務、必要に応じて保護申請の意思の確認の措置を取る申請意思確認義務、申請を援助指導する申請援助義務(助言・確認・援助義務)が存する」と述べました(福岡地方裁判所小倉支部平成23年3月29日判決)。

他方、現実に「水際作戦」が採られるような場合には、弁護士が、保護の申請に同行するなどして、申請を援助することが可能です。しかも、その際、日本弁護士連合会の援助事業を活用することにより、基本的には無償で弁護士の援助を受けられます。

したがって、もしも水際作戦にあったような場合には、弁護士に相談していただくのが良いと思います。

申請保護の原則の問題

日本において、貧困とされる方のうち、生活保護の利用にたどり着いている方は1割程度にとどまるとの指摘がなされています。

その原因として、保護の申請時の「水際作戦」の問題のほか、生活保護制度やその利用方法についての周知不足、保護を受けることに対する社会的な偏見等、さまざまな要因が考えられますが、その多くは、保護開始のために申請を必要とする「申請保護の原則」に起因するとも考えられます。

したがって、今後、申請保護の原則自体についての見直しが求められるでしょう。

- 法の舞台/舞台の法 - 2026年3月発刊 vol.222

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