2026年5月18日、日本弁護士連合会(日弁連)の主催する「行政不服審査法シンポジウム~審査請求手続の迅速性及び創造的審理員審理の技法~」が開催されました。
私は企画者側としてこれに携わりましたので、今回はこのシンポジウムについて紹介します。
行政不服審査制度
行政不服審査法は、簡単に言うと、行政処分に対する不服申立ての制度について定めた法律です。
行政処分は無数にありますが、例えば、生活保護の支給申請を却下する処分、児童扶養手当の受給資格を喪失させる処分、地方公務員に対する懲戒処分、住民税の課税処分、各種の営業停止処分などが比較的イメージしやすいのではないかと思います。
こうした行政処分について不服がある方は、裁判所における訴訟手続を利用して処分を争うことも可能ですが、行政機関内部における手続において、処分を争うことも可能です。
その手続が行政不服審査制度です。すなわち、行政不服審査制度は、行政機関内部において、行政処分の適法性や妥当性を審査し、違法又は不当な行政処分を受けた方の権利の救済を図るとともに、行政の適正な運営の確保を図る制度であり、これを具体的に定めた法律が、行政不服審査法です。
行政不服審査制度の理念と実情
行政不服審査制度は、法律上、簡易迅速な手続であるとされていますが、実務上、審査に相当な時間を要する事例のあることが指摘されています。
一般に、不服を申し立てた方は、数週間から数か月間程度で結論が出ることを期待されているのではないかと拝察しますが、実際には、2、3年かかる例もあると言われます。
このように、審査に時間がかかる原因の一つとして、審査に携わる方、特に、審理手続を主宰する「審理員」という立場の方が、迅速に審理を進めるためのノウハウを有していないことが挙げられると思われます。
どういうことかというと、地方自治体において、弁護士が審理員に指名されることもあるのですが、多くの場合、行政機関の職員が審理員に指名されており、そうした方は、法律の専門家ではないため、法律の解釈適用や事実認定などに際して逡巡し、その結果、迅速な審理が難しくなる場合があるのではないかと思われるのです。
シンポジウムの内容
以上のような行政不服審査制度の理念と実情を踏まえ、今回のシンポジウムでは、弁護士として審理員などの立場で行政不服審査制度に携わり、多くの事例を取り扱ったご経験のある石川美津子弁護士、濱和哲弁護士、木虎孝之弁護士、矢田圭弁護士にご登壇いただき、迅速性の確保のための創造的審理の技法について、パネル・ディスカッション形式で、ご紹介いただきました。
また、行政不服審査制度について長年にわたって研究をされている深澤龍一郎教授(名古屋大学大学院法学研究科)にご登壇いただき、研究者の観点から、ご意見やご助言をいただきました。
全体のコーディネーターは、私が務めました。
ディスカッションの詳細をご紹介することはできませんが、登壇者の弁護士の方々から紹介される技法は、書籍に書かれていないようなものもあり、そのような創造的技法を共有できる貴重な機会になったと思います。
また、深澤教授からは、法理論上の観点からの貴重なご意見をいただくとともに、イギリスの不服審査制度についてご紹介いただきました。日本の不服審査の充実を図るためには、海外における不服審査制度を参考にする必要があることを痛感しました。
