最近、患者さんに「自分を褒めるのを徹底的にやってください」とお勧めしています。すると、ストレスが多い人ほど、「それが一番苦手です」と言います。だから、無理矢理にでも自分を褒める言葉「私よくやってるよね」と何度も思い浮かべるようにと説明しています。

やってみるとわかりますが、「がんばっている」と自覚のあることであれば、褒めることは難しくありません。それができたら、普段から当たり前にやっていることを褒めてみましょう。例えば、目が覚めたら「よく起きたね」、ご飯を食べたら「よく食べたね」、通勤通学、通院、買い物などで移動したら「よくここまで来れたね」、挨拶したら「よく挨拶できたね」、人と会話したら「よく話が聞けたね、おしゃべりできたね」、歯を磨いたら「歯磨きできたね、えらいね」など、思いつく限り自分を褒めましょう。家事をしたら「すごくよくやってるね、すばらしい」くらい思ってもいいのです。

お母さんは赤ちゃんに「生まれてきてくれてありがとう」、おっぱいを飲んだら「いっぱい飲んだね、えらいね」、ウンチをしたら「いっぱいウンチ出たね」、目が覚めたら「よく寝たね」と褒める言葉をいっぱい使います。そのように気持ちを自分に向けてあげましょう。

次は自分がダメだと思っているところ。ここは褒めるのは難しいので「それでいいよ」と認めてあげましょう。片付けができなかったら「いいよ、元気なときにがんばろう」、仕事で失敗したり、人に迷惑をかけたりしたら「そんなときもあるよ、仕方なかったよね」、どうせ自分なんてと感じたら「そんな風に思っちゃうよね」と全部認めてあげましょう。以前このコラムで紹介した「そうだよね、そう思うよね」という言葉を繰り返し自分に言ってあげましょう。自分にしているダメ出しを一切止めるくらいのつもりでやりましょう。

普段は自分にダメ出して裁いているのが通常モードです。自分には○と×があると思っているのを、自分は全部○なんだと思う練習です。意識をしていないとすぐに通常モードに戻ってしまいます。自分を褒めるのを3ヶ月くらい続けると、「通常モードの方が苦しい」と感じるようになってきます。

どうして自分を裁いてしまうのか？

人によって自分に×をつける基準や強さはバラバラです。ある人は片付けられないことに、ある人は料理が上手にできないことに、ある人は子どもにあたってしまうことに、ある人はお金が関わると強く罪悪感を感じて×をつけます。ここまでは許せるけど、ここからは許せないという基準があります。この基準ができたのは母親の機嫌が一つの原因です。「母親の機嫌が悪くなることはダメなこと」「母親が笑顔になることはいいこと」と子どもは解釈して記憶します。しっかり反抗期ができていないと、この記憶を持ったまま大人になります。無意識のうちに「この場面を母親に見られたらなにか文句を言われそう」と自動反応が起きて、ちゃんとしなければいけないと思い、きつくてもがんばってしまうのです。自分のすべてを肯定することは、母親がダメ出ししたことに対して「私はいいと思う」と、母親に反抗をすることになります。「母親の生き方と私の生き方は違ってもいい」「母親の影響はもう受けない」と決めましょう。

大人や子ども、男や女も関係なく、すべての命は、皆平等に尊いものです。しかし、自分にダメ出しをすると、自分の価値が下がったと勘違いしてしまいます。そのため、がんばって追いつこう、誰かの役に立とう、迷惑をかけないようにしようと、余分なエネルギーが必要になります。自分を褒め続けると、自分の価値は高かったことに気づきます。余分なエネルギーを使わなくて良くなると、体調が改善します。今の苦しみの多くは勘違いだったことに気づきます。