イタリアではトマトが美味しい季節になると「下手な料理がなくなる」といわれているそうです。トマトが持っているうまみ成分が働くのでどんなお料理もトマトを加えると美味しくなるということなのですが……。そもそも「美味しい味」ってなんなんでしょうね。
「美味しい」という感覚はとっても個人差があります。マクロビ的には体質に合ったものを食べると美味しいと感じると考えるのですが、一般的には「おいしさ」の大きな要因は、”うまみ”成分といわれています。ご存知の通り、日本人がもっとも美味しいと感じる”うまみ”成分は「グルタミン酸」です。この「グルタミン酸」は、タンパク質の構成成分である「アミノ酸」のひとつで、天然食品の「アミノ酸」の大部分を占めています。そしてこの”うまみ”成分は、たんぱく質が結合した状態では感じることが出来ないのです。タンパク質を細かく分離していった結果”うまみ”として感じることが出来るようになります。タンパク質からうまみを引き出すためには細かい振動が必要になります。これがお料理でいうところの火の力になるわけです。細かい振動を素材に心地よく与えてあげるとたんぱく質を上手に分解していくことが出来て、美味しいと感じるお料理を作ることに繋がっていくのです。そう、美味しさは素材から引き出してあげるものだし、お料理とは美味しさを引き出す作業なのです。
それでも最近はこのうまみ成分を素材から引き出すのではなく、別のところで作り上げたものをつけ加えて食べるお食事が増えてきてしまっています。だから刺激的な味を美味しく感じ、味の深さを感じ取れなくなってしまっているのがとても残念に思います。
たとえばトマトは「うまみ成分」である「グルタミン酸」「アスパラギン酸」の宝庫で、ヨーロッパではこのうまみを上手く引き出すためにトマトをじっくり煮込んでトマトソースを作ります。そういう意味ではトマトソースはヨーロッパではお醤油やお味噌の役割で、トマトはお味噌やお醤油の材料になる大豆の役割を担っています。日本人にとってはトマトは生で食べるイメージが強い食材ですが、本来はじっくり煮込んで旨みを引き出して食べるほうが美味しく食べることが出来る食材です。じっくり火を入れて煮込むことで極端にカラダを冷やすエネルギーからカラダにとって不必要な古塩を取り除くエネルギーへと変化し、カラダを癒してくれる食材に変身するのです。昔の人は誰から教えてもらったわけでもないのに、素材の持っている力や美味しさを理解し、そのものをどんな風に使うとより美味しくなるのかまでわかっていたのです。そんなことを考えてみると、やっぱりマクロビの考え方は自然界の恵みと先人達の食べ方から学ぶことで、私たちのカラダを癒すものとしてこれから大切にしていきたいお料理方法だなと思うのです。
昔の人たちが知識として得たものではなく、宇宙からの知恵として得たもの。そのことを大切にして、知識馬鹿になるのではなく宇宙からの知恵を受け取れるカラダとココロ作りに励みたいなと、トマトを手にした私は今日もまた深く感じたのでした。
中 美恵
.。゚+..。゚+.☆ 今月のMie’s Recipe ☆.。゚+..。゚+
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中美恵
中美恵(なか みえ)氏 KII認定 マクロビクッキングスクール校長 東京南青山プライベートサロン Mie’s Room 主宰 1997年に、KII認定マクロビオティックカウンセラー・中広行氏と出会い、料理法や理論を学び始める。 2000年「おいしく、楽しく」をテーマにした「マクロビクッキングスクール」を大阪に開校し、全国に展開。現在は料理に留まらず、マクロビオティックに出会うことで多くの可能性を手に入れた自身の経験を活かし、「年を重ねるごとにキラメキを増す」「今の時代に望まれる素敵な女性」をテーマに、多彩な場面で活躍中。 中美恵公式サイト https://miesrecipe.jimdo.com/ >> |