「COVID-19に関係する医療スタッフの皆さんが、多忙で熾烈をきわめるだけではなく、世間から冷たい差別を受けている」
日本でくり返し報道されるこのニュースは、私の理解を超えていました。
「病院の風下にある家から苦情の電話が鳴りやまない」
「医療従事者の子どもがいじめにあう」
諸外国のように感謝とねぎらいの声がたくさん届く、のなら当たり前のことなのですが、世間の不理解の前に、受けなくてもよい苦しみを受けている現実に強く心が痛みました。
京都では4月、京都産業大学で発生したクラスターに伴い、理不尽かつ合理的ではない理由で、当事者と関係も接触もない同学の学生が差別的な待遇を受けていることについて、会社として速やかにこのようなことは許容しがたいとの声明を出し、先月号の本稿で掲載しました。この光景は東日本大震災と福島における原発事故のときと同様、およそ科学的とはいえない無知がもたらすものであり、私たちがこのようなときにこそ、乗り越えなければならない感情の暴走なのです。
私たちは、かつてハンセン病(らい病)患者に対して、同様の集団的偏見と差別的対応をおこなってきた歴史があります。当時の科学知識や社会状況では致し方ない、仕方ない側面もあったことは否めませんが、病気の本質が明らかになってもなお、罹患者が社会的制裁を受け続けなければならなかった悲しい事実があります。現代において、私たちには充分な医学的知識があり、それを知ることも極めて容易な時代を生きています。それなのになぜ、という気持ちと同時に、誰もが恐怖におびえ、自制を強いられた重圧があることも事実であり、これを責めたところでなにも実状は変わらないのです。
せめて、私たちはその片棒を担がないことを心に決め、そして私たちにできることをやりたい。その結果考えたのが、私たちが自らの手で作り、そして提供することができるジェラートに、その思いをのせることでした。
過去にも書いてきたように、自然食販売会社である「プレマ株式会社」がジェラート作りに至った理由は、私がジェラートは「心の薬」であると気づいたからです。その瞬間、見える世界が変わりました。
親族の死において経験したこと、それは、人は病の終着点に近い場所で、口にやさしいアイスクリームを欲するという事実です。病に伏すまでもなく、良質のジェラートは日々の苦難に立ち向かう人々の心を溶かし、またがんばる力を与えてくれるということも真実であると日々実感してきました。
極めて残念なことに、ジェラートの本場・イタリアのロックダウン下においては、ジェラート店の営業は一切認められず、何ヶ月にもわたって、イタリア人の食文化と癒しの象徴であるジェラートは、人々の口に届きませんでした。私はこの事実にも心を痛め、やはりなにかできないかと考えてはいたものの、明確な答えには至れないまま、悶々と日々を過ごしていたのです。
もちろん、日本でも自粛要請のため、私たちの飲食店舗もまた極めて厳しい状況になりましたが、そのようなレベルとは起きている事態の深刻度が違うところが、世界のあちこちにあるのです。
COVID-19の最前線にいて、自らを犠牲にして向かい合う医療スタッフの皆さんがいること。ジェラートの本国、イタリアにおいてもジェラートは大事なときに人に届かなかったこと。この2つへの悲しみと共感、そして応援の気持ちを表現することが、私たちの今できることにほかならない。これが、私たちが後先考えずに「10000食のナチュラル・ジェラートを、COVID-19と向かい合う医療スタッフの皆さんにお届けする」と決めた理由です。
同じお届けするのなら、他にはない、医療関係者の皆さんの心の薬、そして身体の糧になるように、
- 多忙で、充分日光に浴することができない方の免疫力維持のため、ビタミンD3を1カップ5000IU添加する
- ゆっくり食事もとれず、どうしても不足するマグネシウムやカルシウムほか70種以上のミネラルを加える
- ビタミンCや鉄、葉酸、水溶性・不溶性食物繊維を大量に含むスーパーフードや薬膳素材を複数使う
- 水の力を生かし、水と和素材の力を引き出すことで、合成乳化剤や合成安定剤等の添加物を一切使わない
- 共感の心で作り、感謝の心で無償の愛を一挙手一投足に注ぐボランティアの皆さんでカップ詰めする
ことにしました。
私たちの持つ設備や無償で製造・カップ詰めできるメンバー、資金等の限界から、1週間700個を目安に、店舗のある京都と東京の合意をいただいた感染症指定病院、クラスター発生病院の感染症対応スタッフの皆さんに4ヶ月にわたってお届けする予定です。
本プロジェクトについては、5月10日から準備を開始し、本誌をお届けするころには実際に、ジェラートが医療機関に定期的に届いている見込みです。プロジェクトの進捗や皆さまにご協力をお願いしたいことについては、東日本大震災のときに設立した「プレマ基金」等のホームページに掲載していますので、「10000食のジェラートを医療の最前線へ」で検索してご覧いただき、ご支援いただけますようお願いをいたします。