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転ばぬ先の栄養学

【Vol.29】「カルシウムと健康について」(その2) カルシウム代謝の仕組

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 先月号の「らくなちゅらる通信」でも触れましたが、今後の連載内容を理解していただくには、まず、人の生命を守るために重要な働きをしているカルシウムが、人間にとってどのような代謝の仕組みで関っているのかを、前もって知っていただくことがとても大切なので、もう少し詳しく話をしたいと思います。

 人間には、骨に存在するカルシウムに対して、血液中にはその1万分の1のカルシウムしかありません。さらに、細胞の中のカルシウムは血液中の1万分の1です。この濃度比率の差が、人の体のさまざまな機能を調節しているのです。

 口から摂取するカルシウムが不足することによって、血液中のカルシウムの濃度が低下した場合、副甲状腺から副甲状腺ホルモン(パラトルモン)の分泌が増加してきます。するとホルモンが骨に作用して骨にあるカルシウムに対して溶出を促し、血液中のカルシウム濃度を上昇させ、血液中のカルシウム量が不足状態にならないよう調節されているのです。また、副甲状腺ホルモンは、肝臓で一部活性化されたビタミンDをさらに腎臓で活性型ビタミンDに変化させ、腸からカルシウムの吸収を促進させることで、血液中のカルシウム濃度を上昇させています。逆に、血液中のカルシウム濃度が上昇し過ぎたときには、甲状腺からカルチトニンというホルモンの分泌が増加し、骨からのカルシウムの溶出を抑えます。また、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンもカルチトニンと同様に骨を保護する働きをします。すなわち、骨に貯蔵されているカルシウムを出し入れすることで、血液中のカルシウム濃度が調節されているのです。

 血液中のカルシウムが少なければ引き出し、多ければ抑制する。まさに骨はカルシウムの銀行であるといえます。日本人は、慢性的にカルシウム摂取不足に陥っており、それが大きな要因となって様々な生活習慣病へと結びついているのが現状です。

山口清道

山口清道氏
日本予防医学研究会理事、フルボ酸・腐食性物質機能研究会会長。大手企業や新聞社、薬剤師会、教育委員会その他の各団体が主催する講演会で講師を務め、『食品破壊の実態』『カルシウム不足の脅威』などをテーマとする講演回数は1000回を越える。
現在は講演活動を休止し、食品科学研究所・BAOBAB代表、株式会社バオバブ代表取締役として、イメージ商品が氾濫する現代における、ほんもの食品の研究開発に取り組む。

- 転ばぬ先の栄養学 - 2010年1月発刊 Vol.29

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