３月11日に起きた東日本大震災による地震と大津波による被害を、私はカンボジアで知ることになりました。カンボジアへこれまでご寄付くださった皆様、そしてサポートしてくださった方も被災されました。親日家の多いカンボジアでは、多くの方が心配し、声をかけてくださるとともに、日本で被災された方々へのメッセージを頂きました。今回は、これまで私がカンボジアで受け取ったメッセージをお伝えしたいと思います。

　近所に住む現地の仏教系ＮＧＯの代表をしているおじさん（カンボジア人）は、テラ･ルネッサンスが事務所を開いているバッタンバンで、２００７年に交通事故で亡くなった日本人と親友だったこともあり、常に気にかけてくれ、ご飯や飲みにいつも誘ってくれます。そのおじさんは、バッタンバンにある何校もの小学校を回り先生や子どもたちから小額のお金を少しずつ集め、義援金として、日本国大使館に10万円分を届けてくれました。他の有名人らが寄付している義援金と比べれば、少ないのかもしれませんが、物価のまったく違うカンボジアのバッタンバンでの10万円は、凄い金額です。でも、『重要なのは金額ではない』とおじさんは言います。『どれだけ多くの人たちが日本で被災された方々へ共感し、想いを寄せてくれたかが重要なんだ』と。その言葉を聞いて、10万円の中には、どれだけのカンボジアの人たちの想いが詰まっているのかと思うと胸が熱くなりました。

　ちょうど、トヨタ財団のアジア隣人プログラムという助成金で、昨年11月から始めた地雷埋設地域でのクメール伝統音楽復興＆継承プロジェクトを実施しているオッチョンボック村では、伝統音楽の先生が自ら作曲して、村の子どもたちと一緒に、亡くなられた方を慰霊、追悼し、被災された方を応援するメッセージの入った歌を歌ってくれました。初めての歌で、「小さい子どもたちには難しいのでは」と、最初は思われましたが、何人かの先生と村人たちが主導して歌ってくれたので、子どもたちも歌えるようになり、最後は伝統楽器の美しい音色と歌声は綺麗な響きとなり、感動的なメロディーが小学校の教室全体に広がりました。伝統音楽の先生は、『大人がしっかり見本を見せれば、子どもたちはきちんとそれに倣って応えるんだ』と語ってくれました。

　私の家の近所のカンボジア人の女の子（９歳）は、今年２月に１人でカンボジアに来てくれた藤田君を心配して、「タカ（名前は崇文なのでタカとカンボジア人に呼ばれています）は大丈夫？ いつまたカンボジアに来るの？」と何度も聞くので、何度も安否を確認しました。メールで安否確認が取れたものの、彼の家のある茨城県も大きな被害を受けていました。私があまりうまく被害の状況を説明できないので、その９歳の女の子は、彼の電話番号を聞き出し、直接電話しようとしましたが、つながりませんでした。その後、藤田君は、テラ･ルネッサンスのスタッフとして、被災地の岩手県遠野市へ入り、現地調整員として被災地支援に活躍してくれています。

　その他にも震災の起きる数日前に、スタディツアーで訪問したカンボジア義肢装具士養成学校の校長であるシサリーさんからのメッセージ。「私の想いと祈りをささげている人たちは、この困難な時に日本の皆様と一緒にいます。そして愛する人々を失った方々のために祈りを続けます。これは歴史的な大惨事です。」　同じくスタディツアー中の震災前日に地雷原を訪問した、カンボジアの地雷撤去活動を提携する地雷撤去団体ＭＡＧカンボジアのカントリーマネージャー、ジェイミー氏からのメッセージ。「私たちは皆、日本で起きている恐ろしい出来事と、多くの人々の命が失われたのを見て、大きなショックを受けると同時に、悲しんでいます。皆様のすべての家族、友達が無事であることを願います。そして、この非常に困難な時に私たちの想いは、日本の皆様と一緒です。」

　そして、最後に一緒にいつも働いているテラ・ルネッサンスカンボジア事務所の現地スタッフを代表して、プロジェクトコーディネーターのクン・チャイ氏からのメッセージ。「日本に住む皆様へ。テラ・ルネッサンスのカンボジア事務所を代表して、２０１１年３月11日に起きた未曽有の大震災によって愛する家族や親せき、友人を亡くされた全ての日本の皆様へ、哀悼の意を表します。カンボジアへは日本の皆様から多くのご支援をいただいており、感謝を表すとともに、被災された方々へ、私たちはいつも一緒にいることをお伝えしたいと思います。」

江角泰（えずみ たい)