2012年11月テラ・ルネッサンスは、海外の事務所の現地スタッフを3名日本に呼んで、世界会議を東京と京都で開催いたしました。カンボジア事務所からは、女性地雷被害者のスタッフであるヨート・イェトが初来日しました。初めての海外、初めての飛行機、全てが初めての中、彼女は、世界会議だけでなく、東京、宮崎、京都と各地で講演をしてくれました。その時の様子を報告したいと思います。
講演会で話をするイェト |
世界会議の東京大会の前日に彼女は日本に到着しました。事前に200人ぐらいの人たちが来ることも伝えていました。前日も眠い中、夜11時ごろまで練習をしていましたが、これだけ多くの人たちの前で話すのは、もちろん初めて。やはり最初はものすごく緊張したようです。10分間のなかで、彼女が伝えたかったことの30~40% ぐらいしか話せなかったのではないかと思います。言葉に詰まりながらも、なんとか講演を終えた後、パネルディスカッションがありました。普通、パネルディスカッションは、パネリストの方に話を振るものですが、この日のコーディネーターの本間先生は、観客席に座っている人にも話を振ります。そして、イェトの講演のなかで、「自分は世界平和を実現したい」という言葉があったので、「何をしているときに世界平和を実現していると感じますか」という質問が、いきなり、イェトの方にされました。通訳しながら、なんと答えるのかドキドキしていましたが、彼女の答えは、とても短く意外なものでした。それは、「今」という言葉。聞いてから、妙に納得した言葉でもありました。日本にやってきて、日本のスタッフだけでなく、ウガンダやコンゴのスタッフとも出会い、そして多くの支援者の皆様にも参加してもらい世界会議の場にいる自分。こうして出会った人々と一緒にいること自体が、世界を平和にしようと思っている人たちの集まりであり、まさに『今』平和を造っていると感じていたのかもしれません。
東京での世界大会から2日後。2年前にカンボジア・スタディ・ツアーに参加してくれた佐久間さんが、イェトの講演会を企画してくれました。彼女は、カンボジアでイェトに会ってから、その笑顔に魅了され、大ファンになったのです。東京、日吉の喫茶店で開催された講演会には、20名近くの人たちが来て下さいました。アットホームな感じで、時間も80分ぐらい用意されており、今度はイェトももう少し落ち着いて、自分の話ができるだろうと思って臨みました。しかし、時間の感覚がまだないのか、どんどん話は進んでいき、始まって20分ほどで最後のメッセージまで終わってしまいました。さすがに、ここから話が後戻りするには変だし、通訳をしていても困ってしまいました。ここで佐久間さんがうまくその辺りを感じ取って、質問タイムを取ってくれました。また、せっかくのアットホームな感じだったので、隣同士で意見交換をしてもらう時間をとり、その間に佐久間さんと打ち合わせをして、質問は暗い内容が多かったので、なんとか明るい感じで終わりたいねぇと話をしていました。そこで、質問タイムの最後に佐久間さんが、「今、幸せですか ? 」という質問をしました。イェトは、「私は、今幸せです。自分は、生まれてから、ありのまま。辛い時も、そのまま。幸せな時も、そのまま。お金がたくさんあっても、このまま。貧しくても、このまま。いつも、自然のありのままだよ。」と答えました。その瞬間、斜め前にいたお客さんが手を挙げました。質問はこうでした。「何をしているときが幸せですか ? 」イェトは、「実は今新しい彼氏がいて、近く結婚をする予定です。彼氏といるときが幸せです。」という答えに、会場は拍手喝采。地雷被害に遭い、脚を失い、さらに2度の離婚を経験した彼女が、満面の笑顔で困難にも負けずまた新しい人生を踏み出そうとしている姿に、通訳していた自分も鳥肌が立ちました。
東京日吉での講演会にて イェトと参観者の皆さん |
この後、東京から九州に移動して、また講演が続きます。これは、また次回のお楽しみに。
江角泰(えずみ たい)
江角泰(えずみ たい)氏 NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。 大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。 現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。 NPO法人テラ・ルネッサンス >> Premaラオスプロジェクト >> |