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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.59】地雷原の中を耕す村人たち ~スタディツアーの地雷原視察から2

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 前号からの続きで、2012年3月7日、スタディツアーの地雷原視察の様子の続きを報告します。パイリン特別市にあるロン・チョク村、ダイチャンダラ地雷原です。

 この地雷原の概要や新しい撤去の方法をデモンストレーションで見せてくれた地雷撤去団体MAG。その後実際の地雷原へ、プロテクターとヘルメット、バイザーをつけて入ります。すでに人間の背丈よりも高くなったバイオ燃料に利用される芋であるキャッサバが、右手に生えている畑の中を進みます。この地雷原は、草が生い茂っており、これらの草を刈ってからの作業になります。地雷原の一番奥までたどり着いた頃、山の方から少しずつ雨が落ちてきました。急いで地雷撤去チームのテントがある拠点へ戻ります。雨が降っているときは撤去作業ができません。地雷撤去作業員たちもすぐに道具を片付け始めていました。ぬかるんだ土に足をとられ、滑らないように歩くことも大変で、撤去作業の大変さが分かります。地雷撤去は、決していつも晴れていい天気という状況とは限らず、雨や雷などの天候にも影響されます。地雷原視察から戻った後、MAGのスタッフから新しい地雷撤去における土地譲渡の手法の話を聞きました。2009~2012年にかけてカンボジア全体の残されている地雷原の調査が、カンボジア政府の機関によって実施され、それによって地雷が埋設しているだろうとされていた多くの地雷原の場所が限定されました。それまでは、地雷原といっても、どこまでが実際に地雷が埋められているのかはっきりしていませんでしたので、推定されるところは全て地雷原とされて、かなり広いエリアになっていました。MAGは、この地雷原のデータを元に村人たちから撤去の依頼が来て、地雷撤去をしますが、実際に撤去をする前にMAGのコミュニティ・リエゾン・チームが、この地雷原を調査して、地雷を撤去する方法や戦略、計画を立てます。地雷原とされた場所でも、土地をランク分けして、地雷に汚染されている可能性がないところは、撤去作業自体をしないようです。

 最初は、この意味がよく分かりませんでした。しかし、次の説明を聞いて分かりました。政府機関による全国調査が実施されて以降、このダイチャンダラ地雷原の中を、畑として3年ほど耕した村人がいたのです。そして、3年間で地雷も不発弾も何も見つからず、事故もなかったため、その畑の部分は地雷撤去をしなくてもよいと判断されました。しかし、地雷や不発弾が見つかった場合は、その場所から、半径50m以内は地雷撤去をするようです。また別の地雷原では、調査で地雷原とされていた場所を、すでに3年間トラクターで耕した村人がいました。その地雷原では事故もなく、地雷も不発弾も何も見つからなかったため、地雷対策機関へ報告し、地雷原というランクから外してもらったこともあるそうです。これを聞いて思ったことは、これでは「地雷事故がなくならない」という思いです。村人たちが地雷原とされている場所に入っていき、畑として耕しているのです。

 2つのケースは、たまたま地雷や不発弾がなかったから、村人たちが入っていっても事故に遭わなかっただけで、もし地雷や不発弾があれば、事故が起きていた可能性があります。それが、2011年1月~12月までに119回の地雷・戦争残存物の事故が起きていて、211名の被害者が出ていることにつながっているのです。貧困層の村人たちは、危険を冒してでも畑として耕す土地を得たいのです。その他には、タイへ出稼ぎに行くぐらいしか生活していく手段がないのが、今のカンボジアの現状です。新しい土地譲渡の方法は、撤去作業をより効率的に、早く実施するためには有効ですが、新たな地雷の被害を止めるためには、村人たちが地雷原に入らないようにしなければいけません。もしくは、入らなくても生活していけるように、貧困層の最低限の生活を保証していくことが必要になります。それが、テラ・ルネッサンスが、地雷撤去の支援とともに、地雷埋設地域で村落開発支援をしている1つの理由でもあるのです。子どもを育て、家族を養うために地雷畑を耕し、精一杯生活している人々がいます。こうした理不尽な環境で、精一杯生活している人たちの生活を考えた時に、なぜか思い浮かんできた言葉がありました。京都の東本願寺に書かれている言葉です。「今、いのちがあなたを生きている。」

江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏 NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。
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- カンボジア地雷除去支援 - 2012年8月発刊 Vol.59

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