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オルタナティブファーム宮古

自然の恵みいっぱいの宮古島から農業や商品開発するなかで感じたこと気づいたこと

オルタナティブ
ファーム宮古 代表

松本 克也 (まつもと かつや)

自動車メーカーなど14 年の研究職を離れ、2012 年5月に家族4人で宮古島に移住。約1万平米の畑で主に有機サトウキビを栽培し、黒糖蜜やキビ砂糖などの加工品を製造。
畑で黒糖作りが体験できるプログラムも準備中。その他、有機バナナの栽培、未完熟マンゴーの発酵飲料の製造に携わる。

【Vol.90】オトーリ文化

投稿日:

 沖縄本島(那覇市)の南西方およそ300㎞の距離にあり、面積204km²、人口5万3千人の宮古島は、その地理的・気候条件や歴史・文化的な背景に伴われて、様々の独自文化を発展させてきました。宮古の言葉・ミャークフツでは、いらっしゃいの意味の「んみゃーち」など「ん」で始まる単語や、50音には存在しない舌使いを必要とする音を駆使します。私は未だに殆ど内容が理解できませんが、独自言語で楽しそうに話されている地元の方同士の会話は羨ましくも格好良く映ります。クイチャー(踊り)や御嶽信仰も普段の生活に密着した身近な存在でありながら、やはり神秘的でもあり、とても興味深いです。 今回、宮古独自の文化としてよく引き合いに出される「おとおりの文化」について、私の目線でご紹介したいと思います。以下、ウィキペディアからの引用です。 オトーリ(御通り)は、参加者で「親」となるものが立って口上を述べた後、同じ杯に酒を注ぎなおしてとなりの参加者に渡す。注がれたものはその杯を飲み干し、杯を「黙って」親に返す。 「親」は、返された杯に、再度酒を注ぎ、先程飲み干した人の次の人に杯を渡す。杯を渡された人は、同じように一口で杯を干し黙って親に杯を返す。 参加者に杯が一巡するまで上記を繰り返し「親」の一人手前までオトーリが回ると、「親」の手前の人は杯を干した後、その杯へ酒を満たし「親」へ返杯する。 「親」はその返杯を飲み干した後、自分のオトーリへ最後まで付き合ってくれた礼を述べ、最初の「口上」で述べ足りなかったことがあればそれにも言及し、〆の挨拶を行って次の「親」を指名する。 以上が最初の「親」ひとり分のサイクルである。 上記の「親」から指名された人が新しい「親」となり、同じように口上を述べたあと、上記の手順を延々と繰り返す。(口上は普通その会の意義とか、日ごろ思っている自分の主張などなんでもいい。回ることにより、親は参加人数+1杯飲むことになる。オトーリを回す方向には「豊年まわり(時計回り)」と「大漁まわり(反時計周り)」という型があり、漁師などの海にまつわる仕事をしている人は大漁まわり、農家では豊作まわりが普通と言われているが、必ずしも決まったものではなく、より目上の人の方から回すなど人様々である。)

 以上を一見すると、一気飲みの回し飲みを延々続け、その場は大変な惨事になりそうな印象を受けます。ですが、自身が実際に地元の方との宴に参加して感じたことがもっとも確かな情報であるという前提に立って、いきなり個人見解・結論から入ると、これも大切に守り継承したい文化だと思っています。 かつてお酒は誰でもが口にできるものではなく、神様に献上した貴重な神酒を、一つの盃ですべての人が同じように頂く、というのがそもそもの起源であるようです。 木造建築が主流だった頃、台風被害に遭って倒壊した家の修復作業は、部落の仲間で助け合うのが当たり前だったと聞きます。噂は筒抜けで隠し事もできない(逃げ場がないという表現も当てはまるぐらいの)小さいコミュニティにあって、相互に日常を注意して見守りながら、周囲に負けじと切磋琢磨を続けるという日々の積み重ねの歴史が伺われます。今も淡々とサトウキビの栽培管理をされる80代現役の先輩方や、酷い台風被害に遭った翌朝から淡々と掃除を始められる地元の先輩方の様子を間近に見ると、敬意とともに強かな逞しさを感じずにはいられません。 私のように島へ移住してきた者が地元の方の信頼を獲得していくには、真摯に実績を積み上げるしかないと思っています。何世代にも渡って支えあい・築き上げてこられたコミュニティにいきなり入り込めないのは当然のことと理解しています。しかし、宮古島の土地・人は決して排他的ではあせんし、私の日常も同じように地元の先輩方に見守られています。 そうした先輩方とも席を同じくして、同じ盃で同じ量の神酒を分けて頂けるのがオトーリ文化です。上座・下座などの礼は守りながら所謂無礼講で、日常の様々の話題を持ち寄ってお互いの労を労い・敬い、楽しい時間を共に過ごします。オトーリ文化は、そうやって上手に縦社会・横社会を形成していく手段として息づいてきたのではないかと思います。 強要はされませんし、参加するみんなが場を楽しく演出するものだと思います。 酒量は自ずと多くなりがちですし、自分を失わないよう/健康を害さないように気をつけないといけないですが、機会がありましたら臆せず参加してみられてはいかがでしょうか。

松本克也
プレマ宮古島プロジェクトリーダー(兼農業生産法人(株)オルタナティブファーム宮古代表取締役)
2012年4月まで自動車会社に勤務。車体製造の接合技術開発に心血を注ぎ、エンジニア一筋の人生を送る。2011年12月にもともとプレマファンだった姉から「プレマ・宮古島プロジェクトの発足とスタッフ募集」のメルマガ情報を聞いて『これだ!』と直感し、転職を決意。そこからはとんとん拍子に事が進み、家族で宮古島に移住。今ではすっかり都人(実は京都出身)ならぬ宮古人になりました。
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プレマ株式会社の『宮古島プロジェクト 宮古島の自然農法を推進し、島の健全な地下水と珊瑚礁を守り、お客様に安心と安全を届けます。

- オルタナティブファーム宮古 - 2015年3月発刊 Vol.90

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