首を支える歯の役割
一昔前と今とでは、病気の種類も違って、どんどん新しい病気が生まれています。なぜかといえば、人間が住む環境が徐々に変わってきたからだと思います。少しでもプラスに考えれば、病気とは環境になじめないことを指すようにも思えますが、いずれにしても新しい環境になると、新しい病気が生じてくるのではないでしょうか。
そんな環境のなかで、人間の成長・発育について、大きな危機感を抱いています。これを進化というのか退化というのかは、なにを基準にするのかで変わってきますが、日本の食事を含む環境が、おかしくなっていることで、さまざまな問題が生まれていると思います。その裏側には、家族形態が核家族化したことで、躾が行き届かなくなったことも、加速因子のひとつと感じています。
歯科では顎関節の関節部の骨の変形が非常に多くみられるようになってきました。原因は歯の噛み合わせが低く(上下の歯の丈が短い)、顎の発育途中に関節部に応力がかかって、変形してしまうからです。しかし、その本当の原因は、首が据わる前の赤ちゃんのときに、首を保護できなかったことに関係があるとわかってきました。 赤ちゃんを抱っこしたり、おんぶしたりするときにも、ある程度、首を支えることが必要です。まだ首が据わる前の本来あまり動かしてはいけない時期には、せめてベビーカーなどを使って、赤ちゃんの身体を水平に寝かせることが必要です。しかし、その時期に抱っこして赤ちゃんを移動させれば、重力のかかる方向が変わります。そのことで、赤ちゃんは首を痛めているのです。
「三つ子の魂百までも」といわれますが、3歳までの成長発育の環境は、とても大切です。3歳は子供の歯が生えそろう時期ですが、噛むことは第一に消化を助けるだけではなく、実は首をも支えているのです。歯が生えるまでの時期は首に対して、最大限の注意を払わなければ、その子の一生を棒に振ってしまいます。
成人では首を右に傾けると右の上下の歯が当たり、また左に傾けると左の上下の歯が当たります。首を後ろに倒すと両方の奥歯が当たり、前に倒すと両方の前歯が当たります。これが正常な歯の位置関係ですが、首がそれ以上に倒れた場合は、歯が先に接触して首をまもるシステムができあがっているのです。補助輪の付いた自転車でいうと、自転車が首で補助輪が歯で、自転車が倒れようとすると、補助輪が支えて、それ以上、自転車が倒れないようにしている状態と同じです。
音楽と神経細胞の関係
また、高齢者の認知症、不安やうつが原因で精神科にかかる方も多くなっています。食事の栄養バランスなども原因のひとつになりますが、歯がうまく噛めていないと、認知症やうつを発症するリスクが高くなります。噛み合わせが低くて噛み合わない状態が続くと、首の骨の位置を変化させてしまう力が働きます。それにより椎骨動脈という、脳頭蓋底に入って脳の栄養をつかさどる血管が圧迫されてしまい、血流が一気に下がってしまうのです。これが原因で、うつや認知症が発症するのではないかともいわれています。
認知症に関しては、海外では最近、昔からある音楽療法なども効果的であるとわかってきています。40Hzの重低音がグリア細胞の働きを活性化し、アミロイドβの分解・処理速度を向上させ、アルツハイマー病を防ぐ可能性があるそうです。普段なにげなく音楽を聴いていますが、大音量で音圧を上げると、身体が振動するのがわかります。その振動によって、身体が篩にかけられたように、浄化されるのだと思います。
たまに大音量の音楽を聴ける場所に出向いたりするのもよいと思います。生まれる前はお母さんのお腹の中で大音量の心音という音楽を聴いていたので、自然に還って、心も落ち着くのではないでしょうか。