「毎日やらなければいけないことに追われて、自分の時間がない」。「もやもやした気分でやる気が出ない」。「生きがいが感じられない」。「自分がなにをしたいのかわからない」。
相談に来られる患者さんで、こんな気分になっている人がたくさんいらっしゃいます。その原因は、心が満たされていないことにあるようです。
こういう方々は、心が満たされていないので、なにかを求めて、それを得ることで、その不足感を埋めようと頑張ります。お金、成績、パートナー、友人、ファッション、地位や名誉、他人からの評価など、外的なもので自分を満たそうとします。それらのものが手に入ったときは、一瞬の満足感を得られます。しかし、手に入ってしまうとその状態が当たり前になるので、時間が経つとまた不足感が出てきてしまいます。
満たされない原因
このように感じる原因は、一つは脳に本来備わった「問題を見つけて改善する」「常に成長しないといけない」という機能にあります。欲しいものが手に入っても、脳は「欲しいものが手に入った状態」のなかに、まだ問題がないか? と問題探しを始めます。たとえば、お金がほしい。お金さえあれば不満はないと思っていた場合。目標金額が手に入ると、一瞬は喜びがあるかもしれませんが、すぐに「どうしたら減らさずにいられるだろうか」「もう少し増やすにはどうすればいいだろうか」「お金を持っていることを他人にバレてはいけない」などなど……新たな解決すべき問題を作り出して、すぐに幸せな状態ではなくなってしまいます。脳は、自分が幸せになるために、常に自分の外側(環境)を変えることで問題を解決しようとします。しかし、いくら環境を変化させても、完全に自分を満足させることはできません。それで得られるのは一時的な幸福感でしかないのです。
もう一つの原因は、その望みがかなったときに、本当に心が満たされるのか? ということです。心が満たされるのは、脳が問題を改善したときではありません。問題を改善できたとき、一瞬の喜びは感じるかもしれませんが、それは脳が作り出した問題(マイナス)を改善(プラス)したに過ぎません。結果はプラスマイナスゼロです。わざわざみずから不幸という穴をほって、その穴(不幸)を埋め戻しているだけ(プラスマイナスゼロ)なのです。外側の状況は変化したかもしれませんが、自分の内部のエネルギーが増えたり、高まったりしたわけではないのです。だから一時的な喜びにしかならないのです。
では、どうすれば本当に心が満たされるのでしょう?
それは、心の底から感動をしたとき。それは、魂が震えるような喜びを経験したとき。それは、自分を完全に受け入れたとき。それは、自分が生まれてきた意味に気づいたとき。
あなたは本当はどんな自分でありたいと思っていますか? どんなときに心から喜びを感じますか? 「本音の声」は聞こえますか?
ずっと自分を抑圧してきた人は、本音に気づくことが難しくなっています。その場合は、自分の気分に気づく練習をしましょう。「気分がいい、気分が悪い」はわかりやすい指標です。気分が良くなることは、本音が喜ぶことです。おいしいコーヒーを飲むこと。大好きな音楽を聞くこと。漫画、本、雑誌を読むこと。お洒落をすること。アイドルにキャピキャピすること。アロマの香りに包まれること。きれいな景色を見ること、などなど。自分を喜ばせることを遠慮なく、後回しにせずやってあげましょう。気分を優先できるようになると、自分の本音に気づきやすくなってきます。「本音の声」は、魂の声です。一生かかっても見つける価値のあるものです。