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オディの農業日記

羽鹿 秀仁 (はじかひでひと)

サラリーマン、経営コンサルタント、青年海外協力隊の隊員として中米のニカラグア、パナマで5年間活動後、ネットワーク『地球村』というNPO団体のスタッフとしてアフガニスタン支援に3年関わり、2006年から三重県名張市赤目で農薬を使わない農業を始める。

【Vol.39】オディの農業日記 第32回

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【不思議な感動】

 今年の稲刈りは雨が多くスケジュールが遅れ気味でしたが、何とか一段落して、ほっとしています。今年もたくさんの方と一緒に稲刈りをしましたが、その中でも特に思い出に残る稲刈りがあります。

 10月初めに6名の知的障害を持った方々の稲刈り体験を受け入れたときのことです。障害を持った方たちを受け入れるのは初めてで、最初は、鎌で手を切ったりしないかな、きちんと刈ってくれるのかな、刈り取った稲をぬかるんだ田んぼに置いてお米に泥が付いたりしないかな、と心配ばかりしていました。でも最初に稲刈りの手順を実演して、説明すると、皆さんきちんと理解して説明どおりに丁寧に仕事をしてくれました。もちろん、健常者と比べるとペースはゆっくりですが、みんなで声を掛け合いながら、時には笑い声が秋の空に響き、稲刈りは順調に進みました。

 お昼に作業終了。その後、みんなでおにぎりとお味噌汁を田んぼの脇で食べました。みんなが美味しそうにおにぎりをほおばる姿を見ていると、心の底から何か分からない感情が湧き出してきて、涙がこぼれてきました。

 特に何かを話したり、感動的なことがあったりした訳ではないので、なぜ涙が出てきたのか分からず、とまどいました。もちろん、周りの人たちにも涙を見せないようにしました。

 みんなが帰った後、さっきの感情はなんだったのかとじっくりと考えてみました。もしかしたら自分が本当にやりたいこと、実現したい社会の一部が見えたことで涙が出てきたのかもしれないと思いました。

 障害者も健常者も一緒になって一つの作業をして、一緒にご飯を食べる。今、私は農業をしてお米を販売して生活させていただいていますが、本当はお金のやり取りではなく、いろんな人が集い、一緒に汗を流して仕事をして、一緒に食事をする。それぞれが自分のできることで人の役に立ってみんなで仲良く生きていける社会をつくりたいんだなと感じました。

 今、私が大きな影響を受けている人が2人います。

 生き方のこつを伝えている小林正観さん、麻雀の世界で20年間無敗を誇り、今、麻雀を通じて生き方を教えている桜井章一さん、ともに障害を持ったお子さんをお持ちです。そしてお二人とも障害を持って生まれた我が子に「私のところに生まれて来てよかったね。生まれてきてくれてありがとう。何があってもお前を大切にするからな」といっておられるそうです。

 人間として本当の強さ、あたたかさを持っている人たち。その人たちが感じておられることをほんの少しだけですが感じることができた素晴らしい一日でした。

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- オディの農業日記 - 2010年11月発刊 Vol.39

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