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いつもの道で

【Vol.39】美味しい季節

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 「この臭い・・・」

 足もとに目をやると、特徴的な黄色い葉とともに、誰かが踏んでしまったのだろうか、半分ほど形を崩した小さな実がアスファルトの上に寝そべっている。銀杏だ。

 くさいけれど、この中に、透き通るような緑色をした、あの美しく美味しい「種」がある。大通りを行き交う車の音を横に、季節を感じる。あぁ、美味しい季節がやってきた。

 私がこの臭いを美味しい物の臭いと認識できるようになったのは、父親のお陰かもしれない。小学二年生の秋、神奈川に暮らしていた頃のことだ。確か「児童遊園地」という誰でもが無料で入れる大きな自然公園があり、よく家族で訪れていた。

 あと数時間すれば日が傾き出すだろうある日の午後、公園内を散策中、腰をかがめて何かを拾っている人達がいた。何かいい物を見つけたかのように、すかさず近寄り話を聞く父(この行動は今も変わっていない)。話を終えると、弟、私の手には相手の方から分けてもらったスーパー袋が渡され、「これが美味しくなるんだって。頑張って拾ってね」との指示が。これが初めての銀杏拾いだった。スーパー袋を手袋にしているとは言え、手にとった実から漂う香りはだいぶ強烈だった記憶がある。ただどうやら、食いしん坊の私は幼いときから「美味しい」という響きに弱かったようで、くさくても最高に楽しかった。

 イチョウの木々の下で、父の広げる袋と地面との間を行ったり来たりしながら収穫した銀杏は、持ち帰って処理し、固い殻を割り、フライパンで煎ってぱらりと塩をふって、美味しくいただいた。

 このときの思い出が、私を銀杏好きにしているのだろう。銀杏並木が黄金色に輝くとき、それは美味しい季節。

宮崎 美里

- いつもの道で - 2010年11月発刊 Vol.39

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