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いつもの道で

【Vol.35】子ども時間

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 「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、ラン・ラン・ラン♪」

 雨の中、四歳くらいの小さな女の子とお母さんが楽しそうに雨の中を歩いている。

 会社に向かう朝、通称斜めの道(碁盤の目の京都には珍しく、私の自宅近くには一本だけ斜めに走る道があるので、勝手にそう呼んでいる。垂直三角形の一番長い辺みたいにシャキーンとのびた道だ)で、時折出会うあの親子だ。

 いつもおしゃべりしながら、仲良くゆっくり歩く女の子とお母さんの姿は、朝の忙しさを忘れさせてくれる。まぁるくあったかいものが心にじんわりと広がり、なんだかとても幸せな気持ちになる。いい朝のスタートだ。

 小さな両手に握られたピンクの傘が、歌にあわせて揺れる。そう言えば、小さい頃は雨をうっとうしく思うことなどなかったなぁ。一体いつ頃から、雨は出かけるのに大変だと思うようになったのだろう。

 お気に入りのレインコートを着て、長靴を履いて、傘を差して・・・

 「あぶないから傘はクルクルまわしちゃだめよ」
と母親に言われていたっけ。子どもの私にとっては、雨の日も、ちょっと変わった格好のできる楽しい日だったように思う。

 草木についた雨粒も、葉の上をいくカタツムリも、水たまりをのぞくのも、興味惹かれるものがたくさんあった。わずか二、三分の間にも発見とドキドキのある子ども時間は本当に大事にしたいものだ。

 大人になると、子ども時間は隅に追いやられ、なかなか登場の機会をもらえないが、ちょっとしたことにも感動できる心と、日々のほんの少しのゆとりのために、時々呼び起こしてあげるのもいいかもしれない。

 朝の出会いに感謝。水玉模様の傘を片手に今日も会社へ向かう。

- いつもの道で - 2010年7月発刊 Vol.35

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