すすぎ1回で黄ばみや黒ずみを起こさず洗濯槽も汚さない、そして、肌や環境にも優しい、そんな画期的な洗剤が「善玉バイオ・浄」です。当たり前のように洗剤に使われている界面活性剤を極力使わずに洗剤を作るというまったく新しいアプローチで洗濯の常識を覆し、さまざまな洗濯の悩みを解決してきた水上雅博社長に開発者としての想いを伺いました。
「こんな洗剤がほしいと言われれば、それに必ず応えたい。その結果、弊社には3000種類の洗剤があります」と話す水上氏
私の学生時代は、当時盛んだった学生運動の煽りを受け、思うように勉強することができず悔しい思いをしました。その代わり、多くのアルバイトの経験や部活の能楽部で得たことがその後の人生に役立ちました。大学卒業後、就職して洗剤の研究開発をおこなっていましたが、会社の方針と合わず退職。転職先を探しましたが不況下で思うように進まず、不本意な仕事をするくらいなら自分でやってやろうと考え、1976年にツー・エム化成を興しました。最初のころは、クリーニング用の洗剤を一人で研究から開発、製造、販売までおこなっていました。
そして徐々に業績が上がり、軌道に乗り始め、多くのクリーニング業者さんや家電メーカーさんとおつきあいさせていただくことになりました。15年ほど前、ある大手家電メーカーから、ドラム式洗濯機で洗濯すると洗濯ものが黒ずむ、と相談を持ちかけられました。そのころ、洗濯機メーカーが競っていたのは節水で、少量の水で洗濯するとどうしても水の汚れが濃くなり、それが衣類を再汚染して黒ずませるのだとわかりました。当時、「エコ」というものは常になにかを犠牲にして成り立っているようなものでした。高い価格、使いにくさ、性能の低さなどです。「汚れが落ちにくいけど、地球環境のためだから仕方ない」という声を聞いて、私は、「そうではない、なにも犠牲にせずとも問題を克服できるはずだ」と考えました。
ちょうど同じころ、アメリカから新しい洗剤の開発依頼が飛び込んできました。アメリカでは環境基準が強化され、排水の水質基準が厳しくなり、同時に、従来の洗剤に含まれる物質に発がん性があることが判明し、「環境負荷が少なく、汚れ落ちの良い洗剤を作れないか」という内容でした。
誰も考えつかなかったアイデアで道が開けた
まったく新しいアプローチで洗濯の悩みを解決できないかと考え、素材自体を一から見直しました。黒ずむ原因に対しては汚染物質を衣類につけない「再汚染防止効果」が最適な方法、また黄ばむ原因は洗剤や石けんの残留物とわかり、極限まで界面活性剤を使わずに汚れを落とすための研究開発に着手しました。洗剤は、一般的に多くの界面活性剤を含みます。界面活性剤は油と水を融和させるので、汚れを分解し、乳化させて落とすために必要とされています。界面活性剤を使わずに洗剤を作るという発想自体が、業界の常識を大きく覆すものでした。汚れを落とすために、「善玉バイオ」という環境浄化型の酵素を独自に開発しました。この酵素、実は飲めるんです。もちろん飲用ではないので公にはしませんが、私は飲むときもあります。美味しいですよ。
こうして研究を重ね、完成した洗剤が「善玉バイオ・浄」です。界面活性剤をほとんど使わないことが環境を守ること、同時に少ない界面活性剤でもしっかり洗浄することが大きな評価を呼び、全米クリーニング協会から推薦状が出るほどとなりました。
日本でも黒ずみが起こらないことが実証され、また、従来の主婦の悩みである洗濯槽汚れが起こらないことも大きなセールスポイントとなり、洗濯洗浄剤として市場に投入することを決定。このとき、「すすぎは一回」を日本で初めて提唱したのがこの「善玉バイオ・浄」でした。
なにも宣伝していないにもかかわらず販売数がどんどん伸びていきました。それは本当にありがたいのですが、私は心のなかでは工場での生産が追いつかなくなることを恐れ、右肩上がりの販売数を見て「ああ、もうお願いだから売れてくれるな」とまで思っていました(笑)。
「善玉バイオ・浄」は、一般的な洗濯用洗剤に比べ高価格なので、既存の洗剤になにか不満や悩みを持っている方が手に取られます。その理由は、敏感肌、小さいお子さんがいらっしゃる、環境保全の意識が高いなど、さまざまです。そして一度お使いになると「もう元には戻れない」と口を揃えておっしゃいます。「生乾きでも嫌な臭いがしない」「タオルがフワフワになる」「黄ばみがない」というお声をよくいただきます。こういったお声は本当に嬉しいですね。開発者冥利に尽きます。
先日、たまたま社員が見つけたのですが、YouTubeに載っていた動画に「善玉バイオ・浄」の名前が出てきました。洗濯槽のクリーニング専門業者が、ある家庭で洗濯槽を取り出してみたところ、ほとんど汚れがついていない。びっくりして、いろいろと質問していると、今まで見たことのない洗剤を使っていた、それが「善玉バイオ・浄」だった、という動画でした。洗濯槽の黒い汚れは、そこについた汚れカスにカビが生えているものです。「善玉バイオ・浄」を使うとその汚れがつかなくなるからカビも生えないというわけです。
私は「こんな洗剤がほしい」という声を聞けば、必ず応えたい。決して「できません」と言いたくないのです。これからも、さまざまなニーズに応えて「できない」を「できる」に変えていく。「今」にとどまることなく、常に先を見ていきたいのです。大人しく机に座ってなんかいられません。まだまだ、可能性は無限に広がっていると考え、研究開発にいそしむ毎日です。