最近よく耳にする「AI」という言葉ですが、すごいらしい、人間に取って代わるとも言われています。ただ、イメージだけが先行していて、なにができてなにが苦手なのかは、少しわかりにくいように思います。そこで今日は、難しい話は抜きにして、AIの「苦手なこと」を身近な例でお話ししてみます。
近ごろ、毎日のようにAIと仕事をしています。そのなかで、だんだんと得意なこと苦手なことが見えてきました。AIは、とても頭がいいように見えます。質問をするとすぐに答えてくれますし、難しいこともわかりやすく説明してくれます。まるでなんでも知っている人のようです。でもその正体は、「たくさんの言葉のつながりを覚えて、それらしく答えている仕組み」です。
この「たくさん」は膨大な量で、インターネットなどから集めた膨大な言葉のつながりを学んでいます。たとえば、人に「おはようございます」と言えば、「おはようございます」と返ってくることが多いですよね。AIも同じで、「こう言われたら、こう返すことが多い」というパターンを覚えています。ただし、それは単なる一言同士の対応ではありません。それまでの会話の流れや話題、相手がなにを求めているのかという意図、さらには文章全体の雰囲気まで踏まえて、「次に来ると最も自然な言葉」を選んでいます。AIは、その場の空気をまとめて読み取るようにして答えを組み立てているのです。
ここまでは、人間とあまり変わらないように思えるかもしれません。しかし、決定的な違いは、AIが「目的を持って生きているわけではない」という点です。私たちは、「今日はこれをやろう」「これを成し遂げたい」と考えて動きます。仕事や家事、だれかを喜ばせることなど、そこには必ず「こうしたい」という思いがあります。しかしAIにはそれがありません。AIは、自分から「これをやろう」と考えることがありません。だれかになにかを聞かれて、初めて動きます。そして、その場その場で「一番それらしい答え」を返しているだけなのです。ですから、長い時間をかけてなにかをやり遂げる、ということは基本的にできません。
もう一つ、AIの苦手なところがあります。それは「珍しすぎる状況」に弱い、という点です。AIはたくさんのパターンを覚えていますが、それはあくまで「よくある流れ」です。そのため、前提が間違っていたり、聞き方があいまいだったりすると、うまく対応できないことがあります。たとえば、「東京は北海道にあるとして、その特徴を説明してください」といった、前提がずれた質問をすると、それらしい説明はしてくれますが、中身はどこかちぐはぐになります。筋は通っているようで、よく考えると変なのです。これは、人間でいうと「その場にうまく話を合わせる人」に少し似ています。
さらに言えば、AIは「正しいかどうか」よりも「自然に聞こえるかどうか」を優先します。そのため、ときどき間違ったことを、もっともらしく話してしまうことがあります。ここが、使うときに一番気をつけるべきところです。まとめると、AIはとても便利で賢く見えますが、「自分からなにかを成し遂げようとはしない」「珍しすぎる状況や、前提のずれには弱い」「正しさよりも、それらしさを優先する」といった特徴があります。言ってみればAIは、「よく気が利く話し相手」ではありますが、「人生を背負ってくれる存在」ではありません。
だからこそ、私たち人間が目的を持ち、判断し、最後の責任を取ることが大切になります。AIをうまく使いつつ、鵜呑みにしすぎないことが大切です。道具としてはとても優れていますが、使う側の考え方が、そのまま結果に表れるものなのです。少し距離を置いて眺めてみると、AIの得意なことと苦手なことが、かえってはっきり見えてくるかもしれません。
