「また同じことを考えていた」「ぐるぐる思考が止まらない」と感じることはありませんか。
思考が動き出すのは、「なにか問題がある」と感じたときです。人類は原始時代から「なにか問題が発生したとき」に、それを解決しようと前頭葉を発達させてきたのかもしれません。そのお陰で、創意工夫や論理的な思考、コミュニケーション能力を獲得できたと考えられます。しかし、その代償として問題を「発見」して「解決」するという思考のサイクルができ、考えすぎてしまうという副作用も得てしまったようです。
ぐるぐる思考のきっかけになるのは、多くの場合、過去のつらい記憶です。その記憶がよみがえると「なぜこんなことになったの?」「あのときもっと……していれば」などの原因探しや、後悔・反省の思考が止まらなくなります。さらに不安・悲しさ・焦り・怒りといったネガティブな感情が生まれてきます。感情が生まれると自律神経の「交感神経」が過剰に働き始めます。この緊張が続くことで、頭痛・肩こり・めまい・胃の不調・便秘や下痢・不眠・動悸・息苦しさ・手足の冷えといった症状があらわれてきます。心身一如というように、思考と体は深くつながっています。
このぐるぐる思考から抜け出すヒントは、悪い気分に気づくこと。悪い気分の多くの原因は、不適切な呼吸によるものです。思考をしているときに呼吸を止めていたり、浅い呼吸になっていたりします。なんとなく気分が晴れないと感じるとき、直前になにを考えていたかと自分の思考を振り返ってみましょう。答えの出ない悩みごとをぐるぐる考えている場合が多いはずです。
思考を減らすには、①「あ、また考えていた」と心のなかでつぶやく、②足の裏が床についている感触に意識を向ける、③ゆっくり深呼吸をしながら、息の出入りをただ感じてみる、などの方法があります。やりやすい方法で何度も練習してみましょう。すると、思考に気づきやすくなっていきます。そして心が少し落ち着いてきたら、もう一歩進んでみましょう。
例えば、映画館を想像してください。スクリーンには、喜びや悲しみの映像が次々と映し出されます。思考や感情はその「映像」のようなものです。どんな映像が映っても、スクリーン自体は傷つかず、ただそこにあります。思考が浮かんだときに、映像はそのままにしながら「スクリーンそのもの」に意識を向けてみましょう。
別の方法として、青空を想像してください。広い空に雲が浮かんでいます。思考は雲のようなもの。雲が増えて空を覆いつくすと、雨や嵐、つまり激しい感情の嵐になります。でも、どんなに雲が多くても、青空そのものは変わりません。心のなかの青空に意識を向けると、雲はゆっくりと形を変え、いつの間にか流れて消えていきます。それをただ、静かに観察してみましょう。
空という気づき
映画のスクリーンも、心の青空も、その本質は同じです。仏教の言葉で「空」という概念があります。先日、瞑想をしていて「ああ、これのことか」と感じました。空という言葉は知っていても、今まで実感できていなかったことに気づきました。
思考も感情も、空から生まれ、空へ帰っていく。空は心のどこかにあるのではありません。私たち自身がもともと空そのものだったということです。私たちは、空でなかった瞬間など、一度もありません。思考が来ては去り、感情が来ては去り、その「場」こそが、もともとの自分だったのです。
どんな嵐の日も、雲の上には青空があります。思考や感情という映像には必ずスクリーンという土台があります。思考という雲や映像に気づき、その背景に意識を向けると、心はすぐに静けさを取り戻すことができます。
