前号からの続きで、2011年11月28日からカンボジアの首都プノンペンで開催された、対人地雷全面禁止条約(通称:オタワ条約)の第11回締約国会議の様子を、報告いたします。今回は、会議4日目です。
4日目の午前中のセッションは、11月29、30日に引き続いて「地雷除去」です。地雷除去のセッションが長いようですが、実は会議3日目、30日は非公式セッションとして、これまでのオタワ条約の20年間の歩みを振り返り、今後の活動の糧にするイベントが実施されていたのです。会議が始まる前のフィールドトリップや、前日のオタワ条約のプロセスの振り返りといった非公式セッションが、本会議の公式セッションの間にうまく組み込まれたプログラムになっていると思いました。本会議だけ聞いているとやっぱり疲れますし、常に発言を聞いているというのは、政府の代表者にとっても大変だと思います。
この日は、アンゴラ、キプロス、トルコ、セルビア、スーダン、南スーダンが発言しました。最初の発言者であるアンゴラが、2013年1月までの除去期限が達成できないので、除去期限の延長申請の準備をしていることを発表しました。そしてスーダンも、2014年4月までの除去期限までにすべての地雷を除去することは難しく、除去期限の延長を申請する必要があることが述べられました。スーダン政府は、支援が十分にないこと、そして汚染地域の治安が悪いことが障害となっていて、除去期限の達成を妨げていると説明しました。
その後、議長はフロアに意見を求め、ハンガリー、ドイツ、ノルウェー、スイス、地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)、ギリシャ、赤十字国際委員会、ジュネーブ人道的地雷除去国際センター(GICHD)、パラオ共和国、南アフリカ、インドネシア、ザンビア、国連地雷対策チーム(UNMAT)、カナダ、オーストラリアが発言しました。
今回の会議で新しく出てきた問題として、ハンガリーとドイツで新たに見つかった汚染地域があります。ハンガリーは、2011年にクロアチアとの国境での協力プロジェクトを実施中に、ハンガリー領土内に第2次世界大戦中の戦争残存物の汚染地域を見つけたと発表しました。またドイツは、ソビエト時代(ソビエトに占領されていた軍事演習場)の汚染が見つかったこと、一般市民がその場所に入らないように努力をしていることを報告しました。この新たに見つかった汚染地域の問題については、締約国、ICBL、国際赤十字委員会など関係者すべてが来年の常設委員会で話し合うことを、ノルウェーが提案し、オーストリア、カナダ、ザンビアがその提案を支持しました。ICBLは、ノルウェーの提案に賛成すると同時に、ハンガリーとドイツに詳細な報告を求めました。
そして、保有地雷の廃棄のセッションに移りました。ギリシャは経済破綻のために地雷廃棄が進められずにいるが、代替の方法を企業などと話し合っているところであると報告しました。一方トルコは、2011年6月21日に保有地雷の廃棄が自国の資金だけで完了したことを報告し、会議場から祝福されました。ICBLもコメントのなかでトルコの廃棄完了を歓迎し、マケドニアとギニアビサウで新たに見つかった保有地雷の透明性のある報告を賞賛する一方で、ギリシャの経済危機による廃棄の遅れに懸念を表していました。
その後、「実行支援」、「条約の普遍化」へとセッションは進みました。普遍化のセッションは、なんと言ってもヨルダンのミルアド王子。ミルアド王子は「普遍化に関する特使」として、韓国、ネパール、ツバル、トンガ、スリランカの非加盟国を訪問。その後、ツバルが条約に参加したのです。この王子の健闘を称える声が多くの国から出されました。王子の報告では、韓国とネパールの条約加盟は、まだ難しそうです。トンガから、「加盟国になるプロセスを開始している」という手紙を受け取ったことを、ベルギーが発表。ラオスも条約加盟に向けて努力していると発言しました。そしてアメリカは、「まだ政策の見直しの最中である」とのことで特に進展はなく、会場の雰囲気は落胆の色が広がった後に、ソマリアが「2・3ヵ月後に加盟する」と予想していなかった嬉しい発表。「ProgressforForward!」今回の会議のテーマである「その一歩先へ」、少しずつ前進しています。
江角泰(えずみ たい)
江角泰(えずみ たい)氏 NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。 大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。 現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。 NPO法人テラ・ルネッサンス >> Premaラオスプロジェクト >> |