約1年前、ある集まりがあって、三連休をもらって飛行機で成田ヘ行った。久しぶりの飛行機、しかも遠出だった。25年ぶりに会う友人、くわえて初めて会う素敵な人たちと、自然のなかで、とてもよい時間を過ごした。
帰りの飛行機が遅れて関空に到着したため、すぐ電車に乗った。次の最終電車に乗り換えるために猛ダッシュ! しかし無残にも目前で電車の扉は閉まり、行ってしまった。
若かったら間に合ったはず……。とりあえずは帰れる駅まで電車に乗って、とある駅に到着。タクシー乗り場はなく、スーツケースを引っ張りながらウロウロしていると、30代前半くらいの男性が声をかけてきた。
「タクシーですか? このへんは来ませんよ。このへんは危ないです。どちらまでお帰りですか?」。
行き先を言うと、「ここからタクシーだとかなりかかってしまうでしょ? その荷物は重たいですか?」「えっ?」「バイクでよかったら送りますよ」「ええっ!?」。
「僕、ヒマなんです。野良猫に餌をやりにきたのに今日はいなくて。すぐそこに住んでいるんですけれど、よく終電に乗り遅れて、この駅で途方にくれている人を見かけます。そういう方を、自宅までお送りするんです。断る方も多いです。怪しいですしね」。
「でも……」「本当に僕、ヒマなんです。ドライブがてら行きますよ」
どうしよう……。万が一、危ない人だったら……。山に連れて行かれて、バラバラ殺人事件か!? 妄想でいっぱいになったが、このおもしろい流れに乗ってみることにした。
この歳で見知らぬ人のバイクで送ってもらうなんて。「本当にいいんですか? お礼はさせてください」「いりません。僕のヒマ潰しのドライブに付き合ってもらうということで」。
「いや、そういうわけには!!」「とにかく行きましょう」ヘルメットを借り、スーツケースを載せて出発!!
彼は帰る道を事細かに説明しながら、いろいろな話をしてくれた。とても安心できた。家の近くまで送ってもらった。お礼をしたいと言っても絶対に受け取らなかった。「せめてこれを!」と、空港で買ったお土産を渡した。名前を聞くと「山田です」と。絶対本名じゃないと思ったが、お礼を言ってお別れした。彼のおかげて最高な休日が、さらにすごいものとなった。
山田さん、本当にありがとうございました。あなたの人生にたくさんの奇跡と幸運が訪れますように!
プレマルシェ・オーガニクス
小泉 由紀
(こいずみ ゆき)
プレマルシェ・オーガニクス店舗担当。買い物も通勤もどこでも自転車。乗り物酔いが酷いため運転免許は持っていない。最近マウンテンバイクが壊れて、乗りやすい普通の自転車に戻した。電動自転車デビューはまだまだおあずけ。