今年の3月に、2年ぶりにマレーシアへ帰省した。今回は体が弱ってきてる祖母に会いに行くための旅だった。日本に住んでいる私、アメリカ在住の叔母、ロンドン在住の妹、シンガポール在住の母、家族全員が集まった。
祖母の家は歴史のあるマラッカという町にある。今回は人数が多すぎて全員が祖母の家に宿泊できなかったので、近くにあるAirbnbを借りて泊まった。家に入った瞬間、違和感を感じ、初日から妹と私の二人とも幽霊の悪夢をみるようになった。普段は元気な従兄弟も、そこに入ると元気がなくなると言っていた。なにかの邪気が残っているのではと心配になり、ヒーラーである祖母に相談し、安息香の煙で空間を浄化し、各部屋の隅にお守りを置いてみた。
浄化が効いたようで、とりあえず皆は少しずつ落ち着いてきた。今回は滞在時間が長かったので、皆は各自住んでいる国の時間帯でリモートワークをしながら、食事の時間になったら祖母の家に行って一緒に過ごしていた。私は日本での一人暮らしに慣れていたので、久しぶりに家族に囲まれていると、活き活きとした気持ちになって、なんだか気分転換になった。家族のなかで内向的な性格なのは多分私だけだと思う(笑)今回の帰省をなによりも祖母が喜んでくれていたようだ。
今回の帰省のタイミングは、清明節と重なったので、厄年に当たらない私たちは皆で墓参りに出かけることにした。しかし、墓参りの前日に、再び幽霊がまとわりついて離れない夢をみた。祖母と叔母たちに相談したところ、「家にいたほうがいい」とアドバイスをされた。
墓参りが終わった後、皆はおいしい食事とカラオケで盛り上がっていた。そのとき、突然叔母が倒れた。30分くらい経って、意識を取り戻した叔母は、これまでとは違う声で話し始めた。私たちは恐怖で固まっていた。彼女は私の全身を触りながら、「あなたはとても汚れている」と呟いた。祖母と叔父は冷静に彼女を取り囲み、彼女のなかにいたものを体外に追い出そうとした。翌日、叔母は元通りになったが、前夜のことはなにも覚えていなかった。
久しぶりの帰省、相変わらず家族との時間は退屈することがなかった。年を重ねるごとに、家族で集まれるのは結婚式かなにか悲劇的なことがあったときだけだと思うようになった。たとえ遠く離れていても、たまにしか会えなくても、家族との時間を大切にしていきたい。
制作チーム
林 玉文(りむ よくまん)
シンガポール生まれのマレーシア人。京都精華大学アニメーション学科卒。仕事はウェブデザイン、エディトリアルデザイン、パッケージデザインなど。趣味はドリーミーな漫画やイラストを描くこと、ヴィーガン料理。