糖質や糖類、糖分など「糖」がそれぞれなにを表しているのかよくわかりません。結局のところ「糖」は身体によくないのでしょうか。(子どもがコーラが好きなのが気になる40代主婦)
A.糖もいろいろ。一概に悪いとはいえません
答える人 プレマ株式会社 お客様コンサルティングセクション 岸江 治次
糖類、糖質、糖分という言葉がなにを表しているのか、よくわからないという方は多いのではないでしょうか。まず栄養全体を見ると、たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素があり、どれが欠けても健康に影響します。そしてこのなかの炭水化物が、最近は「糖質」「食物繊維」と分けて呼ばれるようになりました。近年、糖尿病の方が増えているので、糖質を制限したほうがよいといわれますが、糖質は私たちの体にとって大切な5大栄養素のひとつですから、「糖質制限」と一括りにしてしまうと、問題の本質は見えません。
糖質は糖類と糖アルコールに分類され、さらに糖類はブドウ糖や果糖などの単糖類、砂糖や乳糖などの二糖類、でんぷんやオリゴ糖などの多糖類に分類されます。ここでしっかりわかっておく必要があるのが、糖類のうち、単糖類や二糖類は吸収されやすく、多糖類は吸収されにくいということ。吸収のよい糖を摂ると血糖値が一気に上がってしまい、それを下げようとしてインスリンというホルモンが分泌されます。日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が少ないのですが、現代は欧米と同じような食生活になってきているので、血糖値のアップダウンが頻繁に繰り返され、インスリンの分泌がコントロールされにくくなり、これが糖尿病の方が増えている原因のひとつとなっています。
もちろん糖類は、砂糖からイメージするように甘いもの。甘いものは血糖値や代謝に影響があり中毒性もあるので控えめにするほうがよいです。とくに、最近、甘味料としてたくさんの製品に使われている果糖ブドウ糖液糖のような異性化糖は、体に入る前の時点で化学的に分解されているため非常に吸収がよく、血糖値が一気に上がってしまいます。しかし、炭水化物と聞いてイメージする米やパスタ、パン、芋などはすべて多糖類なので、吸収のよい単糖類と違って、食べてから体のなかでゆっくりと分解、代謝していくうえ、冒頭で触れたように糖自体は体にとって必要な栄養素ですから、極端に制限する必要はありません。
ではどのように糖質を摂ればいいかというと、人類が長い歴史のなかで炭水化物を主たるエネルギーとして食べて生きてきたことからもわかるとおり、糖質と食物繊維をセットで摂るのが健康に良く、日本でいうならごはんです。欧米のように肉が主体でたんぱく質過多という場合は、食後のデザートで別の糖質を摂る意味はありますが、日本ではごはんを食べていれば糖質は十分足りています。脳に必要だからブドウ糖をたくさん摂ったほうがいいといった話もありますが、多糖類は最終的にブドウ糖に分解されるので、わざわざ吸収のよすぎる単糖類を摂る必要はありません。また、糖を代謝するのにクエン酸などの有機酸も大切。人間は食べたものをクエン酸回路という代謝経路で生命活動に必要な物質の材料を作り、疲労を回復することによって日々健康に過ごせています。ほかにもビタミン、ミネラル、酸素、酵素などがあってはじめてきちんと代謝できるので、健康を考えるとき、ひとつの側面だけでなく全体を俯瞰することが大事です。糖質に限らず、いろんなものをバランスよく摂るようにしましょう。