前号からの続きで、2011年11月28日からカンボジアの首都プノンペンで開催された、対人地雷全面禁止条約(通称‥オタワ条約)の第11回締約国会議の様子を、報告いたします。今回は、会議2日目です。
2日目の午前中のセッションは、〝被害者支援〟です。犠牲者支援は、地雷対策(埋設地雷の除去、条約の普遍化、保有地雷の除去、地雷回避教育、犠牲者支援)の中でもっとも進展が少ない、ということが既に確認され、毎年「もっと犠牲者支援を」と呼びかけられています。各国の発表は、「犠牲者がとにかくたくさんいるんです」とか、「こんな施設を作りました」、「いくらを犠牲者支援に割り当てました」、「犠牲者は何人いることがわかりました」、というような報告がほとんどです。その中で、スーダン、アフガニスタン、アルバニア、ヨルダン、チャド、イエメン、ブルンジが生存者への支援を継続するために、更なる資金と技術支援を求めました。
それに対する地雷廃絶国際キャンペーン(以下、ICBL※1)のコメントは、ともに地雷生存者であるウガンダのマーガレットとエチオピアのベケレが、共同で出しました。このように国際会議の場で、被害者自身が会議に参加して、議論に参加することは、対人地雷全面禁止条約の会議が、最も進んでいると思います。私は、ニューヨークでの国連の小型武器の再検討会議にも2006年に参加したことがあり、そこにも多くの小型武器の被害者が参加していましたが、実際の本会議の議論の中にどれだけの被害者が参加していたかというと、ほとんどいなかったと思います。2人からのコメントでは、各国政府の代表者の発表の中にあった「こうした支援をしてきた、これだけの人たちに支援をした」といった言葉とは裏腹に、実際の被害者のところにそのインパクトが届くのがとても遅いこと、実際の成果が現れている国は、わずか数カ国しかないことを指摘していました。「障害者権利条約の精神をいかしたカルタヘナ行動計画(3年前に採択された地雷対策を進めるための計画)を着実に実行するように」とコメントが有りましたが、この障害者権利条約は、アフガニスタンやカンボジア、イラクといった最も被害を受けている国々で、実はまだ批准するプロセスの途中なのだそうです。条約を最も必要としている国で、これは遅いとしかいいようがありません。コロンビアのカルタヘナで採択されたカルタヘナ行動計画からすでに3年がすぎ、2014年までの行動期限までに「これをしました、これができました」という報告だけではなく、実際の生存者の生活へのインパクトによってのみ、達成状況が測定されなければなりません。
そして、被害者支援のセッションの終了後、1日目の各国の一般演説の続きへと戻りました。ミャンマーが軍縮に積極的にコミットしていますと発言しました。ミャンマーは、オタワ条約の締約国会議に初めて参加したそうです。地雷に関しては、「国内の安全保障のために、すべての国が有している正当な権利であると認識され、尊重されていると信じている」のだそうです。こうした発言は、完全に国際社会から取り残されていることを示すもので、よくこの会議で発言できるなぁと思います。そして同じように非締約国の中国。自分の席のマイクの調子が悪かったみたいで、議長に促され壇上で発言しました。中国政府の代表も驚いたようで、「非締約国なのに、すみませんね」と言って会場を笑わせていました。しかし、発言内容は、いつものとおり。「CCW※2の責任を果たしていますから、オタワ条約に入る用意はありません。でも支援は40カ国でしていますし、輸出もしていません」と中国語で。ICBLの一般演説もこの日でした。「2011年、新たな対人地雷の使用が、イスラエル、リビアのカダフィ軍、ミャンマーによる少なくとも3カ国であったことを、とても憂慮している。またシリア軍もレバノン国境に地雷を敷設したようである」と発言。また、ICBLが毎年世界中の地雷問題を詳細に報告しているランドマイン・モニター報告書の最新号からいくつか新しい情報を発表し、これを聞くだけで今の地雷問題がわかる、という中身の濃い内容でした。抜粋すると2010年には、世界中で4191名の地雷と不発弾などの戦争残存物による犠牲者があり、これは前年の2009年から5%増加していること、少なくとも2010年中に200平方キロメートルの土地が除去され、これは1年間における最も高い記録となったことなど。そして数カ国の演説後、地雷除去のセッションにはいり、8カ国が発表したところで会議終了の時間となり、残りは3日目に持ち越しとなりました。
※1:
地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL=International Campaign to Ban Landmines)は、対人地雷を廃絶するための、非政府組織(NGO)による国際的なネットワーク。対人地雷全面禁止条約締結のための運動が評価され、ICBLは97年度ノーベル平和賞受賞。
※2:
特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW=Convention on Certain Conventional Weapons)は、地雷、ナパーム弾等の非人道的な通常兵器の使用を禁止、制限する国際条約。全ての国が賛同する全会一致方式で決められるため、条約内容が、弱い拘束力しか持たないものになっており、対人地雷全面禁止条約は、この枠組の外で、賛同する国により進められたオタワプロセスによって締結された。
江角泰(えずみ たい)
江角泰(えずみ たい)氏 NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。 大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。 現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。 NPO法人テラ・ルネッサンス >> Premaラオスプロジェクト >> |