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特集

インタビュー取材しました。

【Vol.90】ベジタリアンから生まれる 食の未来と可能性

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1月より本誌で連載中のベジタリアン料理家ericoさんに、「ベジタリアン」を切り口に、食の選び方についてお話を伺いました。安心安全、健康、美味しい、楽しい……全部を包み込む食のお話です。

ベジタリアン、私でもできますか?

「ベジタリアン」にはいくつかの段階があります。まずは基本の知識をご紹介。
誰でも、いつでも、ちょっとの工夫で、食を変えることができます。
談:ベジタリアン料理家 erico
文:らくなちゅらる通信編集部 河村郁恵

『ベジタリアン』の定義

(Neoベジタリアン指導者養成講座で使ってるレジュメを参考にしています)
『ベジタリアン』という言葉はイギリスで1842年にベジタリアン協会設立の際にはじめて使用されました。ラテン語の<『ベジトゥス』=力強い>から派生した言葉であり、『健康で生き生きとした』というのが本来の意味。『野菜だけを食べる人』ではなく、生命の共生という思想から食事においては『プラントベース』(植物性)を中心とします。現在では健康目的以外の主義や表現としての菜食も、植物性の食事であれば大まかに『ベジタリアン』として分類されるようになりました。 健康目的以外のベジタリアンとしては、『宗教上の食戒律による菜食』(イスラム教やヒンズー教、仏教)、『動物擁護・愛護の見地からの菜食』(ヴィーガン)、『環境問題・エコロジー・人道上の観点からの菜食』などがあげられます。 健康目的のベジタリアンについては、個人の考え方や目的、文化的背景で7タイプに分けられ、栄養学的に考えられた『ヴィーガン(完全菜食)を最終段階』と考えます。7タイプはそれぞれ以下のように段階づけられています。

★他にヴィーガンを目指す段階外に「オリエンタルベジタリアン」があります。:気を大切にし、五葷( ごくん) ニンニク、ニラ、らっきょう、葱、玉ねぎ、浅葱を摂取しないベジタリアン。
★「マクロビオティック」は菜食主義と混同されがちですが、哲学でありますのでベジタリアンの段階には属しません。( 詳しくは本誌vol.80~84・87掲載「マクロビオティック講座」参照)


【第1段階】セミ・ベジタリアン

動物性食品全般を少量加えるベジタリアン:
セミは『半分』の意味。レッドミート(畜肉=牛・羊・豚)とホワイトミート(鶏肉・魚)ともに摂取します。乳製品・卵もOK。


【第2段階】ポロ・ベジタリアン

鶏肉を加えるベジタリアン:
段階的に畜肉を辞めたホワイトミート・乳製品・卵はOK。


【第3段階】ペスコ・ベジタリアン
(フィッシュベジタリアン)

魚介を加えるベジタリアン:
畜肉を辞め、鶏肉を辞めた段階。乳製品・卵はOK。


【第4段階】ラクト・オボ・ベジタリアン

卵と乳製品を加えるベジタリアン
肉・鶏肉・魚を辞めた段階。欧米のベジタリアンの主流。完全菜食に少量の卵や乳製品を加える。


【第5段階】オボ・ベジタリアン

卵を加えるベジタリアン 肉・鶏肉・魚・乳製品を辞めた(卵を選んだ)段階。欧米ではオボ・ベジタリアンでも卵(卵黄)の摂取量は週に2~4個。


【第6段階】ラクト・ベジタリアン

乳製品を加えるベジタリアン
肉・鶏肉・魚・卵を辞めた(乳製品を選んだ)段階。(オボ・ベジタリアンと同じ段階。)卵か乳製品かという選択は、地域・食文化・栄養学的な見地から様々。


【第7段階】ヴィーガン

完全菜食・純粋なベジタリアン
動物性食品を辞めた最終段階。

まず1アイテムから、台所の断捨離

 ベジタリアンを始めよう、プラントベースを心がけよう。そう思い立ったら、まずはよく使う1アイテムから。いきなりすべてを変えるのはなかなか大変で、挫折してしまいがちです。でも、たとえば調味料。今使っているものがイマイチなら、次からはきちんと良いものを買う。たとえば「オリーブオイルだけはここのもの」というふうに、まずはひとつ、自分で選んで始めてみましょう。そうやって1つ1つ切り替えていくうちに、だんだん選ぶことが楽しくなり、無理なく台所が生まれ変わっていきます。

「安心安全」な食材はどこにある?

 ericoさんが食材を調達するのは、まず近所の農家さんや生協。今回お話を伺うにあたりericoさん行きつけのカフェで場所をお借りしたのですが、そこにも立派な畑が。なんとその界隈で一番古くからある畑で、一度も農薬を使っていないそうです。そんな農家さんがご近所だと一番安心ですが、お取り寄せ、通販という手段も発達しているのが現代のありがたいところ。 ericoさんも実はお取り寄せ好き。お店選びのポイントは、商品についての正しい情報がなるべくたくさん書かれていることだそうです。無添加と書いてあったとしても、それはどういう情報に基づくのか。キャリーオーバーのこと、無農薬でも肥料はどうなのか、どういう人が作っているか……などなど。そのお店がどういう想いをもって商品を紹介しているのかが見えてきます。 お取り寄せは、自分で調べた上で買う、という癖付けにもなります。「安心安全」というのは結局、納得のいくところを自分で決めるしかありません。

はじめの一歩、おすすめ食材

 今まで肉や魚を食べる機会が多かったけど、もっとお野菜を取り入れたい!そんなときは「辛みのある野菜」を取り入れてみましょう。特に、大根、生姜、ニンニクなどは、お肉とも相性が良く、はじめの一歩におすすめです。その先の二歩目では、その他の緑の野菜もぜひ取り入れてみてください。 焼き魚に大根おろしというのは定番ですが、生の大根は肉や魚を中和する働きがあるそうです。また、切り干し大根もおすすめ。切り干し大根は、体の古い油を溶け出させてくれるそうです。 大根の他にも、日本伝統の乾物はぜひ積極的に。乾物は血を綺麗にしてくれるそうです。継続のポイントは、「目に見えるところに置いておく」ことと「使い切る量を決めておく」こと。 ericoさんが料理教室でも積極的に使っているのが、高野豆腐。デトックスの力が高いそうです。高野豆腐というと一般的には甘く炊くくらいしかレシピのイメージがありませんが、実は豊富なレシピが。ericoさんの教室では、四角いままではなく、戻してフードプロセッサーにかけ味付きミンチをいったん作っておき、餃子やミートローフなど、お肉の代わりに活用されています。 そんな優秀な高野豆腐ですが、近年需要が減ってきており、高野豆腐屋さんもどんどん減ってきているのが現状です。優れた食材を未来に残すべく、ぜひericoさんのレシピなどを参考に高野豆腐を活躍させてあげてください。

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erico さん伝授!切り干し大根活用法

お鍋のお出汁に!
鍋をするときに、最初に切り干し大根一袋を入れてしまえば、それだけで簡単お出汁。さらに干し椎茸やお野菜を。これだけで充分においしい出汁が取れます。お肉がほしい方は、お野菜で出汁を取った後にお肉やつみれを入れます。さらにおろし大根を加えれば、体が軽~く♪

何にでもかける! つける!
切り干し大根の袋に直接、大根が戻るぎりぎりの量の水を入れて、袋の口をクリップなどで留めて冷蔵庫で保管。ドレッシングやポン酢などを使う際に、戻った切り干し大根を入れてフードプロセッサーでペースト状にして使います。
使い勝手が良いので、気づかないうちにしっかり取り入れることができます。切り干し大根の有効な成分は水に溶けるので、最低限の量で戻すことがポイント。

誰でも歓迎! 『Neoベジタリアン』

erico さんが料理教室をはじめとした活動の場で感じてきたことを形にした新しい概念、それが『Neo ベジタリアン』です。
Neo ベジタリアン 商標登録出願中(2014-096580) 3月末受理予定

ericoさん提唱『Neoベジタリアン』とは

(Neoベジタリアン指導者養成講座のレジュメより引用)

 ネオ・ベジタリアンは、積極的に自らの食のスタイルを選ぶ人たちのことです。プラントベース&ホールフーズ長期的実践を基幹としますがポジティヴな動物性食品の摂取も否定しません。多角的に栄養学を学び続けるとともにアニマルウェルフェアに配慮した畜産業者さんや自然農法の農家さんを応援します。多様化した食事法に対してもまずは肯定的にとらえ理解し中庸の立場を目指します。

『Neoベジタリアン』構想のきっかけ

 きっかけとなったのは、書籍(『ericoのようこそベジタリアン・クッキングの世界へ「Choice Vegetarian Cooking」』)を出す2年ほど前。ericoさんの料理教室の参加者には、「(お肉を)やっぱり食べてしまう」とか「お付き合いで食べないといけない」とか、学校の先生で子ども達と同じように給食を食べないといけないとか、いろいろな事情がありました。それを悲観的でなく、食を自分で選んで勝ち取っていくような、積極的な方に変えていきたいと感じたそうです。 また、ベジタリアンというと、宗教的、ストイックなイメージがあり、抵抗感があるという方も少なくありません。そうではなく、ちゃんとした農家さんや、アニマルウェルフェアに配慮したものを買って応援している、そういうことが一言で伝わることをやっていきたい。お肉も我慢してやめるのではなく、畜産業者さんを選ぶ。良いものを買うと値段が張るから量が減る、そうなったら自然と野菜のことを考える。その方が抵抗なく広がっていくのではないかと、そんなアイデアがNeoベジタリアンのきっかけになっています。

「食の乱れ」とは?

 ericoさんいわく、昔であれば王様ですら食べられなかったようなものを今は平民まで食べるようになった、だから添加物もできた、本来、王様が食べるようなものをみんなが食べるのは無理な話で、それが今起きている「食の乱れ」の根本的な原因ではないかといいます。あるとき教室で、「食を集めるのが大変で、何でこんなに頑張らないといけないのか怒りを感じます」という方がいて、「平民が食べようとするんやから苦労しなさい」という話をしたら、「がーん、私は愚民でした」(笑)と納得されたそうです。ちょうど九州産のひじきを使っていたときで、「このひじき、(自分で)取りに行けますか?」「(ひじきを取るのも)すごい苦労で、それをボタンひとつで送ってもらえるんだし、怒るじゃなくて、ありがとうございますかもよ」という話をしたそうです。 ほしいものがあるのは本来当たり前ではなく、まさに「有り難い」こと。だからこそ生産者さんを知り、尊敬する。そのことが食を正すということなのかもしれません。

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- 特集 - 2015年3月発刊 Vol.90

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