先日、ニュースを見ていると、副業に関する特集が放送されていました。いま、副業がブームだというのです。
副業がブームになった理由としては、コロナ禍によって、労働者が本業で雇用継続されるか不安を感じていることや、収入が減少していることなどが挙げられますが、他方で、リモートワークが進んだことにより、気軽に副業に取り組めるようになったことや、通勤時間や残業時間の減少により副業に時間を割くことができるようになったことなども、その理由として挙げられています。
他方、雇用する企業としても、従業員に対して支払う給与額を少なくできるという観点から、副業を推奨する傾向があるようです。また、従業員が本業では得られなかった知識や経験をし、それが本業に生かされることを期待する企業もあるでしょう。
もっとも、いまでも副業を禁止する会社は少なくないと思われますが、そのような会社では、何故副業が禁止されるのでしょうか。
副業禁止の定めは有効?
副業が禁止されるのは、一般に、本業がおろそかになることを防いだり、会社の秩序を維持したりするためであると言われます。そして、公務員の場合には、国家公務員法や地方公務員法により副業が原則禁止とされていますが、民間企業の場合には、副業を禁止する法律があるわけではなく、各企業が自ら作成する就業規則に副業の禁止が定められることがあります。
では、就業規則に副業の禁止が定められている場合、従業員は副業をしてはいけないのでしょうか。まず、就業規則に違反して副業をしてしまった場合には、会社から解雇などの懲戒処分を受ける可能性があります。そのため会社に秘して副業することは、避けるほうが無難ではあるでしょう。
しかし、就業規則というのは、あらゆる場合に法的な効力を有するものではありません。労働契約法という法律によれば、就業規則に定められている内容が合理的である場合に、従業員がそれに従う義務を負うとされています。すなわち、副業を禁止する就業規則の規定が合理的であるかどうかが問われるのです。
実際に、副業を禁止する就業規則に違反して従業員が副業をおこない、それが理由で会社に解雇されてしまった場合に、従業員が会社を訴えて解雇が無効であると主張する裁判は、実は少なくありません。
そのような場合における裁判所の判断は、個別の事例ごとに異なるので、一般化することは難しいですが、例えば、本業と競合関係にある会社の役員になった場合や、本業に支障をきたすほどの長時間を副業にあてた場合には、就業規則の適用が認められて、懲戒処分が有効とされています。ただ、逆に考えると、そのような極端なケースでなければ、副業をしたことを理由とした懲戒処分は、無効と判断されるかもしれません。私たちは、憲法で職業選択の自由を保障されており、本業に支障が生じないようであれば、副業は禁止されるべきではないと考えられるからです。
厚労省の就業規則モデル
最後に、厚労省の就業規則のモデルをご紹介します。民間企業がこのモデルに従う義務はありませんが、ここに国の考え方が示されていると考えることができると思います。
そして、平成30年までのモデルでは、副業を禁止することが定められていましたが、現在のモデルでは、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と定められています。
これはあくまで厚労省のモデルにすぎませんが、時代の流れとしては、今後、副業がいっそう広がっていくことになるでしょう。