誰ものなかに内なるリーダーは存在する。リーダーとは社会的な立場に限らず、真の目的へと自他を導く力そのものだ、と私は考えています。
では 「リーダーの仕事はなにか?」と聞かれたら、皆さんはなんと答えるでしょうか? リーダーの仕事は「決断」であると、よくいわれます。起業したてのころ、私もある先輩経営者の方から「いいかい、社長がすべき一番大事な仕事は決断だよ」と強く釘を刺されたことがあります。しかし、私は20数年に渡るリーダー育成の経験から、異なる見解をもつようになりました。
リーダーの仕事は「いい状態づくり」。これが私の持論です。もちろん決断は重要なリーダーの仕事ですが、状態が悪いと、決断力に問題が生じるため、自他を幸せに導くような決断ができなくなります。だから、リーダーが決断よりも優先すべき仕事は「いい状態づくり」なのです。
「いい状態」6つの基準
では、「いい状態」とはどんな状態なのでしょうか? 左の6つを私は基準として採用しています。
①身体はゆるんでいる
②思考は鎮まり、無駄にグルグルしていない
③呼吸はゆったり深い
④視野が広く、明るく見える
⑤心は落ち着いている
⑥声は明るく、よく通る
ちなみに六番目の声は意外でしょうか? 声はバロメーター。心身の状態が如実に現れます。
このような「いい状態」で下す決断は、長期的・全体視野に基づき自他にとってよき決断となりえます。
しかしながら、責任感に溢れる多くのリーダーは、このような「いい状態」とはかけ離れた状態で孤軍奮闘しています。目の前の問題や課題に取り組みながら、日々の業務をこなそうと限界まで力一杯がんばる毎日。神経がすり減り、良質の睡眠や休息が得られず、疲れを引きずったまま翌日も奮闘する、という厳しい現状があります。
このような状態では感性が閉じてしまうため、視野は狭く、心には余裕がなく、なにかと対立的または逃避的になってしまいます。そのため、周りのためにと願っているのによい人間関係が築けず、また、質のよい思考や決断ができなくなります。これはリーダーとしては致命的です。なぜなら、意図せず周りの人を導き誤ってしまうからです。自分の人生の舵取りも上手くいかなくなります。周りのためを思う人にとって、とても辛い現実です。
いい状態はよき影響力
かくいう私も、思わず目一杯やり過ぎてしまうことがあります。そんなときは、思考力や判断力が鈍りますので、物事がはかどらず無駄に時間を浪費してしまいます。そんなときは感性を開き、状態をリセットするための行動をとります。たとえば、
・自然のなかを散歩する
・瞑想する
・22時までに寝る
・くつろげるカフェで過ごす
・ボディヴォイス(感性を呼び覚ます声の出し方)をする、などです。
「これって、怠けているだけなのでは?」という疑問をいだいたり、罪悪感を感じたりする方もおられるかもしれませんね。これらの行動の目的は、「自他によき影響を発揮できるように、いい状態をつくる」ことですから、安心してトライしていただきたいと思います。
そして、「いい状態」であることは、リーダーというポジションの人はもちろんのこと、社会的立場に関係なく、自分と周りによい影響でありたいと願うすべての方に声を大にしてお勧めいたします。「いい状態」を日々心がけ、みんなで周りにいい影響を放っていきたいものですね!