前回は(1)サトウキビの国際価格はどうやっても農業経営が成立しない安価で取引されており、国内の製糖産業は補助金により保護されていること、(2)国産サトウキビの原料供給がなくなっても粗糖の輸入量を増やせば精製糖の市場は困らないことをお話しました。
サトウキビ農家の立場として、生鮮原料からショ糖成分だけを抽出・精製糖に仕上げるのは、本来の良さを損なう勿体ない使い方だと感じます。例えば、畑の土壌成分の違いによって、サトウキビに含まれるミネラル成分も異なり、多様な黒糖の味わいに繋がります。一方、上白糖などの精製糖では、生鮮食品としての個性は完全にそぎ落とされ、サトウキビ本来の味わいは一切残らず、単調・均質な味に規格化されます。個性が活かされず、逆立ちしても勝てない市場で戦うのではなく、個性が高く評価され、勝てる市場を成長・開拓できないか、という活路を考えたいと思います。
短絡的ですが、沖縄県産のサトウキビは、生鮮食品としての繊細な原料取扱いや高度技術に支えられた高品質黒糖や関連商品に仕上げ、精製糖の原料には安価な輸入品を引き当てればよいのではないかと感じています。
政治・経済様々の利害が絡む産業で、移住5年目の私が安易に解決提案できるほど単純でないことは理解しています。しかし、不認識が原因で使われていないことも多く、黒糖の市場はプロモーション次第で飛躍的に拡大する可能性があると思います。かつて私も『砂糖といえば白い粉』という理解で、サトウキビの本当の美味しさを知りませんでした。
では、実際にオルタナティブファーム宮古では、どんな取組みを進めようとしているのか? 次号に続きます。
まろやかで濃厚な味わい。手間と時間をたっぷりかけてできあがったミネラル豊富な天然甘味料。
オルタナティブファーム宮古代表
松本 克也(まつもと かつや)
自動車メーカーなど14年の研究職を離れ、2012年5月に家族4人で宮古島に移住。
約1万平米の畑で主に有機サトウキビを栽培し、黒糖蜜やキビ砂糖などの加工品を製造。
畑で黒糖作りが体験できるプログラムも準備中。
その他、有機バナナの栽培、未完熟マンゴーの発酵飲料の製造に携わる。