デリケートゾーンの脱毛が流行っているようです。V.I.Oとは、Vはビキニライン、Iラインは大陰唇、そしてOは肛門の陰毛のことをいいます。エステサロンやクリニックなどが広告している内容としては①下着からはみ出さないから見た目がよい。②自己処理による肌荒れから解放される。③生理中の蒸れやニオイを軽減して衛生的など。わたし自身も経験のために脱毛サロンへ行ってみたことがあるのですが、何度か体感してみて結論づけたことは、「Vラインの形を整えるだけで充分」ということ。それで見た目は改善できるので、IラインとOラインは、自己処理・サロン等での処理はいずれもおすすめしません。やはり自然体が一番ですね。
まず、処理をすること自体が、デリケートゾーンの肌にかなり負担がかかります。レーザー機器などを当てる処理やワックス脱毛など引き抜いて処理する方法など、さまざまな方法がありますが、いずれにせよ、デリケートゾーンへ負担がない方法は存在しません。
毛にも大切な役割がある!
「ムダ毛」と呼ぶから、ついムダに生えていると思いがちですが、決してそんなことはありません。すべての毛には本来役割があります。体温を保つこと、外からの刺激(こすれや衝撃など)から身体を守ることなど。とくにデリケートゾーンなどリンパ節や太い血管があることろには多く生えています。毛穴(毛孔)の奥には皮脂腺があり、その毛穴から分泌される皮脂と角質が剥がれおちることで天然のクリームとなって皮膚をバリアしてくれる。つまりウイルスや細菌などからブロックしている機能を脱毛することで失ってしまい、それによって感染症などのリスクが高まる可能性もあるのです。
とくに更年期の女性を対象に「将来介護で迷惑をかけないためにも」というキャッチフレーズで脱毛を広告する業者も増えているようですが、それには一石を投じたいものです。なぜなら、閉経して数年経つと卵巣からは女性ホルモンの分泌が少なくなり免疫が落ちます。膣の粘膜が乾燥し萎縮して炎症を起こしやすくなる(萎縮性膣炎)通常の状態でさえも、そのようなことが起こるのに、脱毛で皮脂のバリアまで失うことになるのはとても心配です。
また、もうひとつの毛の役割である「保温」は、更年期こそ大切ですし、ショーツや尿もれパッド(生理用ナプキンも同じこと)に、陰部が直接ベタッと張り付いてしまわないようクッション的役割の緩衝材として陰毛が守ってくれています。どう考えても、年齢を重ねるほど、陰毛はあるほうが本人にとってメリットが大きいと思います。処理をしなくても、自然と年を重ねると白髪も増え、薄くなってきますから、更年期以降は「蒸れ」を心配するより「乾燥」を心配し温活を意識したほうが賢明ではないでしょうか。
つくられた価値観に踊らされない
たとえば「無臭」「除菌」が良いという価値観をつくっているのは、洗剤や除菌スプレーを作ったり売ったりしている会社。デリケートゾーンの脱毛の必要性を訴えているのは誰なのか?少し俯瞰してみた方が良いですね。身体にあるものに「ムダ」など何一つなくて、すべてがあなたにとって完璧で必要なことなのだから。
10代の子どもたち向けにもPRされている空前の脱毛ブーム。腕や足ならまだしも、毛細血管が集まる「性感帯」を、若いころから脱毛によりむき出しにしてしまうと、感度が鈍くなるような弊害が出ないか心配です。とくにデリケートゾーンは、パートナー以外には普段から誰にも見せることのない大切な秘密の部位。無理して嫌な思いをしてまで処理するよりも、自然体の自分をそのまま愛していただきたいものです。