雨季も終わりに近づくとしとしと雨に変わり、晴れる日も増えてきます。7月の安居入りから約3か月。雨季が明けるのと共に、僧侶の長い修行期間の終わりを意味するのがオークパンサーです。寺では村人たちがお祝いの喜捨に詣で、盛大に祭を行います。カオパンサー(安居入り)よりも規模は大きいです。そして修行を終えた僧侶たちは還俗し、故郷の村へ帰っていくのです。
在家信者の一般市民にとっても小さな「修行期間」であった、長く、じめじめとした雰囲気の雨季。それが終了するのですから、町中の様子は一気ににぎやかになります。メインイベントはラオス各地のメコン川やその支流で行われるボートレース。村ごとや会社ごとに数十人のチームを作って、各自自慢の舟を造り、装飾を施して互いに速さを競い合います。特にビエンチャンでは、一週間ほど前から川沿いに屋台がずらっと並び、待ちきれない様子。川では選手たちがオールを手に声をかけながら、一生懸命練習しています。レース本番には、郊外から人が押し寄せ、川沿いの通りは普段からは考えられない満員状態。みんなレースを見に来たのかと思いきや、祭のにぎわいに乗じてビールの栓を開けに来ただけ、なんて人も多く、新年のお祝いに次ぐお祭り騒ぎだと言われています。
またこの時期の名物として有名なのがメコンの火の玉です。毎年オークパンサーの日の夜にだけ見られるというメコン川に浮かぶ火の玉で、ビエンチャンから約60km離れた村で見られると言われています。これはメコン川に住む龍神が吐く炎だという伝説があり、毎年大勢の人が見物に詰めかけます。一年に一日だけというのが少し怪しい感じもしますが、実際に見たという人の話もあり、真偽のほどは定かではありません。しかしラオス人にとっては真偽などあまり関係がなく、お酒を飲む口実に利用されているようです。
そんなにぎやかさの陰で静かに粛々と行われるのがロイカトンと呼ばれる灯籠流しです。バナナの皮とマリーゴールドの花で作られた灯籠の中のろうそくに火を灯し、 平和と繁栄を願って川に流します。元々川の神に感謝する目的で始まったのが起源とされており、ろうそくの火が長く消えなければ、願いが叶うとされています。祭の喧噪の静まった夜、水面にぼんやりと浮かぶろうそくの炎はとても幻想的で、側で見ているものも平和を願わずにはいられません。
そして、オークパンサーを機に解禁となる行事が結婚式です。安居期間は結婚式などの各種お祝い事は自粛する傾向があるので、オークパンサー後の11月、12月は結婚式ラッシュ。毎週末どこかで必ず式が挙げられます。これから乾季に入るラオスは、天気も人々の気分も上り調子。心躍る行事が目白押しなのです。
駒崎 奉子
駒崎 奉子氏 ラオス・ビエンチャン在住3年。大学卒業後、日本での社会人経験を経てラオスへ渡り、日本語教師をつとめる。現在は日本人学校で教える傍ら、ラオス語翻訳や文筆活動も積極的に手がけている。 「こまごめ」は大学時代に名字からつけられたあだ名。 |