日本では果物は熟れてから食べるのが当たり前ですが、ここラオスでは熟れる前の青い状態の果物や野菜たちをよく目にします。パパイヤ・マンゴー・バナナなど、これらは青いままで食べられるように売られています。サラダや炒め物にしたり、おやつ代わりに甘辛いソースをつけて食べたりします。今回は青い果物の代表格、青パパイヤを使ったラオス料理、パパイヤサラダをご紹介します。
青パパイヤはこりっとした硬めの歯ごたえが特徴的で、サラダにする場合は千切りにしたり、ささがきのように切ったりします。パパイヤに和える基本の調味料は、塩・顆粒だし・砂糖・ライムの搾り汁・ナンプラー(魚醤)。そして、パーデークと呼ばれる魚の発酵調味料です。この調味料は、海のないラオスでの貴重なタンパク源確保のために発達したと考えられています。市場へ行くと、濁った茶色の液体が大きな樽に入って並べられています。そして何とも強烈なにおいを放ち、鼻をつままずにはいられません。外国人にはこのにおいがきつくて苦手な人が多いですが、もちろんラオス人は大好き。どんな料理にもパーデークは欠かせません。
和える道具は、一見すり鉢とすりこぎのような道具。まずは基本調味料をすり鉢に入れ、生唐辛子を入れて、たたくように混ぜ合わせます。この動作をラオス語で「タム」と言い、パパイヤを「マークフン」と言うので、パパイヤサラダのことを「タムマークフン」と呼びます。次に千切りパパイヤを入れて同じくたたくように混ぜます。トマトやナスなどお好みで野菜を切って混ぜ合わせてもOKです。混ぜながら味見をし、足りない調味料を足していきます。できあがったらキャベツや各種香草などと共にお皿の上に。パパイヤから水分が出ますが、調味料と混ざり合ったその汁も忘れずに盛りつけ。口へ入れると、甘さ・辛さ・酸っぱさ、そしてパーデークのコクがパパイヤのこりこり感に絡みつきます。もち米と一緒につまめば、どんどん手が伸びてしまうこと受けあいです。
ところで、辛いものが大好きなラオス人ですが、それはタムマークフンに入れる唐辛子の量でよくわかります。通常、私のような外国人なら生唐辛子ひとつで辛さは十分。しかしラオス人は5、6個くらい入れて刺激を楽しみます。南部出身の人になると更に過激になり、10個、20個入れる人もいるとか。一口食べただけで、痛いくらいの辛さです。彼らもそれはわかっているけど、やめられない様子。お腹をこわしても食べ続ける人もいるのです。また、タムマークフンは一人で食べるより、みんなで食べる料理。皿を囲んで皆で「辛い、辛い」とヒーヒー言いながら、おしゃべりに興じます。
太陽もかたむき始め暑さもやわらいだ頃になると、道沿いの屋台に人が並び、その奥では店主がすり鉢をトントンたたいている光景を見ることができます。味見を重ねお好みの味になったら、数人で皿を囲んで談笑する。帰宅前の憩いのひとときを垣間見ることができます。
駒崎 奉子
駒崎 奉子氏 ラオス・ビエンチャン在住3年。大学卒業後、日本での社会人経験を経てラオスへ渡り、日本語教師をつとめる。現在は日本人学校で教える傍ら、ラオス語翻訳や文筆活動も積極的に手がけている。 「こまごめ」は大学時代に名字からつけられたあだ名。 |