日本での3月、4月といえば、冬の寒さから解放され、梅・桃の花がほころび、南からの桜前線が待ち遠しくなる季節でしょう。一方ではあまりありがたくない春の便り、花粉症に悩まされる人も多いのではないでしょうか。
ラオスはというと、実はこの時期一年でもっとも暑くなる季節にあたります。気温は毎日35度以上にのぼり、肌が焼け付くような日差しが降り注ぎます。また山岳部では朝晩と昼の温度差が激しく、朝は上着が必要なくらいなのに、昼にはカンカン照りというときもあります。基本的に雨は降りませんが、暑期後半5月頃になってようやく、夕立雲が現れ雨を降らせるので、その後は幾分か暑さも和らぎます。
日本の夏と違って、湿気が少なくからっとはしているものの、何より日差しが強いので日焼け対策は欠かせません。日焼け止めクリームを塗ったあとに、長袖長ズボン、つばの広い帽子などで重装備をする日本人在住者もいます。ラオス人もバイクに乗る際は必ず上着を着ていますが、普通に着ると暑いので、前後逆にして、背中が蒸れないようにしています。
このように日中は外に一歩出るのも辛いほどなので、活動したければ早朝か、日が落ち始めた夕方からがおすすめです。ラオス人たちも、朝まだ暗いうちから起き出して、仕事を始めます。個人商店では6時に始業など珍しくありません。そして日差しの強くなり始めるお昼前くらいから、休憩モードに突入します。ご飯を食べたあとで、扇風機をつけてお昼寝しながら店番をしている光景は当たり前です。(寝ているので番になっていないのですが。)街中にも歩く人やバイクの数は少なくなり、みんな時間が過ぎるのを家の中で待っているようです。
夕方過ぎると、子どもたちが外へ繰り出します。涼しくなってきたころを見計らって、バドミントンやサッカーなどをし始めるのです。熱中しているときは夜9時ごろまで遊ぶ子どもたちもいます。大人たち、特にお父さんたちはというと、道端や川沿いに集まり、体にたまった熱を洗い流すかのようにビールを飲み干し、会話に興じています。お母さんたちも再び家事に取りかかり始めます。
あまりに暑いので、ラオス人特有の暑さをしのぐ方法があるのでは、と思った私は、あるときラオス人の学生に聞いたことがありました。すると返ってきた答えは「ひたすら水を浴びる」。実はラオス人はきれい好きで、1日2回の水浴びが習慣であり、暑期には3~5回は浴びると言います。日本のように浴槽はなく、またシャワーヘッドがある家庭はまだ少ないので、桶を使って水を浴びるパターンが多いようです。日本で入浴というと晩にその日の疲れを取る意味で行う習慣ですが、ラオスの場合、あくまで「水浴び」であって、時間もとても短いです。体や頭を洗って、手桶で一気にザーッと流したらそれでおしまい。リラックスをしたい場合は、以前ご紹介した「薬草サウナ」へ行く人が多いのです。
この答えを聞いたとき、拍子抜けしてしまいましたが、非常にラオス人らしいとも思いました。時間の流れや自然に逆らわずに淡々と毎日を過ごす姿がそこにはあるのでした。
駒崎 奉子
駒崎 奉子氏 ラオス・ビエンチャン在住3年。大学卒業後、日本での社会人経験を経てラオスへ渡り、日本語教師をつとめる。現在は日本人学校で教える傍ら、ラオス語翻訳や文筆活動も積極的に手がけている。 「こまごめ」は大学時代に名字からつけられたあだ名。 |