NPO法人テラ・ルネッサンスで昨年から実施しているプロジェクトとして、地雷埋設地域の貧困層の収入向上と絡めた地雷回避教育用のグッズ製作があります。地雷回避教育とは、地雷の危険性を村人たちに知らせることで、地雷事故を防止するもので、地雷撤去とともに重要だと言われています。
　カンボジアでも、戦後に生まれた若い世代のなかには、地雷について十分な知識を持っていない人たちもいます。また、カンボジアで使われた地雷の種類は、対人地雷だけで約30種類、対戦車地雷は約6種類、そして不発弾も様々なものが危険な状況で残されています。これだけの種類の地雷や不発弾について、すべてにおいて十分な知識を持っている人は限られています。

　2011年1月から村落開発プロジェクトを始めたばかりのロカブッス村で、村の地雷埋設状況について話を聞いていた時のことです。この村では、2010年、地雷撤去団体MAGによって、村の中にある地雷原がようやく安全な土地になったところです。村長さんをはじめとした村人たちは、『もう撤去されたので、村に地雷原は残っていない』と話してくれました。ただ、2001年には、5件もの地雷事故が起きていました。村人たちが、道路沿いに建つ民家の裏にある、まだ地雷が撤去されていない森を開拓しようとして、事故が起きたそうです。するとある村人が、何やら黒くて、ずっしりと重い、しかし掌に乗るほどの金属の塊を持ってきました。これは、中国製の対人地雷タイプ69だと村長さんが教えてくれました。ただ、危険性のない地雷の一部分だけでした。
　さらにその村人が話してくれたのは、もっと危ない話でした。数年前、彼の子どもが、『家の裏の森から中国製の対人地雷タイプ72を持って帰ってきた』というのです。この地雷は実は2種類あり、タイプ72-Aとタイプ72-Bと呼ばれています。どちらも外見は同じ、緑色をしたプラスチックのケースでできた小さな地雷で、カンボジアの人たちは『カエル地雷』と呼んでいます。ただし、72-Aと72-Bでは中の構造に違いがあります。72-Aは、上からの一定の圧力がかかることで爆発し、爆風で負傷させるもので一般的な対人地雷です。一方72-Bは、上からの圧力でも爆発しますが、中に電子回路が組み込まれており、10℃傾けるだけで爆発する地雷です。72-Bは、電子回路が組み込まれる分、製造コストは高くなりますが、大量に72-Aを埋設し、その中に72-Bを少し混ぜることで、外見が全く一緒の2つの地雷は、見分けがつかなくなり、全て72-Bだと思って対処しなければならなくなります。これは敵の兵士によって、地雷を撤去されるのを防ぐ狙いがあったのだと思います。
このタイプ72の地雷を持って帰ってきた子どもは、本当に運が良かったと言えます。なぜなら、おそらくこの子どもが持って帰ってきたのはタイプ72-A。72-Bであれば、持ち上げた時点で地雷事故に遭っていた可能性があります。この話を聞いたとき、特に戦後生まれの子どもたちへの地雷回避教育の重要性があることを再認識しました。

　昨年2010年に、テラ・ルネッサンスでは、地雷の危険性を知らせるポスターを貼った竹製の『地雷うちわ』を製作しました。そして、提携する地雷撤去団体MAGの地雷回避教育のワークショップで、村人たちへ配布しています。カンボジアは年中暑い熱帯性の気候なので、うちわは、特に電気もない農村の地雷埋設地域の村人たちが日常的に暑さをしのぐために役立つと考え、また、村落開発支援を実施しているプレア・プット村には素材となる竹がたくさん生えていたことから、貧困層の村人たちにうちわを製作してもらいました。2011年2月4日現在、すでに30回のワークショップで、約4000枚のうちわを地雷埋設地域の村人たちへ配布しています。一方で、昨年2010年の地雷＆不発弾犠牲者数は、2009年に比べ17％増加し286名でした。全ての地雷撤去を達成することは重要ですが、その前に『地雷＆不発弾事故ゼロ』を達成することが緊急の目標となっています。そのために『地雷うちわ』によって地雷の危険性を知らせることは、非常に重要になっています。

江角泰（えずみ たい)