弊社では現在、ヘンプ食品や繊維製品のバリエーションを増やしつつあります。健康上のメリットが多種多様にあることがわかっており、後にお話ししますが、私のなかでも「人々を幸せにする素材リスト」に入っている有益な植物素材だからです。ヘンプはいうまでもなく日本語で「大麻」なのですが、残念ながら私たちには、大麻は禁じられたあぶないもの、というイメージが定着しています。大麻=ダメ・ゼッタイという刷り込みのなかで、ヘンプの魅力を語ること自体がアウトロー的な解釈をされることは否めません。その一方で、伊勢神宮でいただく御神札(いわゆる〝おふだ〞)の正式名称は神宮大麻と称され、同様にお祓いで使う道具そのものを「大麻」(おおぬさ) と呼び、日本神道と大麻は切っても切れない関係があります。日本で大麻が禁止されるようになったのは戦後のことで、その経緯については立場によって諸説ありますが、一説ではアメリカの占領軍が日本人の精神的支柱であった神道の影響力を分断し弱めるためだったのではないかともいわれます。実際、戦前から戦後しばらくの日本薬局方(医薬品の規格基準書)では印度大麻草として各種の製剤が紹介され、ぜんそく、鎮痛、鎮静剤として記載され、処方されていました。また同様に戦前は貴重な繊維および食糧素材として政府の推奨のもとで大麻の栽培がさかんでしたが、これらはすべて昭和二十三年七月十日施行の大麻取締法で一変します。種や茎の特定加工品を除き、すべて危険な麻薬であるとして人々の生活から消えていく運命をたどるのです。
アメリカの事情
その一方、日本に大麻禁止を持ち込んだアメリカでは近年、医療用途の大麻解禁が州単位で加速しています。大麻から抽出される薬理成分は大きく分けて2つあります。THC(テトラヒドロカンナビノール)には高揚感や感覚を鋭敏にする作用があり、精神的疾患をはじめ肺癌成長阻害や線維筋痛症の疼痛緩和に効果が示されています。CBD(カナビジオール)にはこのような向精神性がない一方、痙攣、不安神経症、統合失調症、炎症、嘔吐などの緩和と癌細胞の成長の抑制に効果があるという根拠が示され、この一方、または両方を医療用に限り許可しようという動きです。 それだけではなく、大麻全草を嗜好品として許可する州も現れ、コロラド州とワシントン州ではすでに解禁されています。アメリカに限らず、条件付き、条件なし解禁ともに多くの国で大麻の魅力が再発見され、タバコの規制強化とは裏腹に、合法化の動きが広がっています。医療用に限らず、繊維、食品や美容素材としての価値や、建材からエネルギー問題解決への可能性など、栽培に農薬を必要とせず循環型素材としてきわめて優れた特性をもつ大麻には偏見の一方で強い注目が集まり始めました。日本でもTHCをほとんど含まない産業用大麻については特区での試験栽培が人気となっていて、一つの変化の兆しが見え始めています。
日本の今後
そんな昨今、同様に健康に多くのメリットがあるヘンプミルクの輸入をスタートしようとした弊社には、ちょっとした事件がありました。ヘンプミルクは麻の実から作られるため、大麻取締法の規制外の素材です。弊社の輸入した製品はミルク感を強くし、オメガ3をさらに豊富にするためヘンプオイルが添加されています。税関から「この商品は麻薬に該当する恐れがあるので、近畿厚生局麻薬取締部に連絡するように」との指示が出ました。これだけでも驚きですが、担当官は詳しく資料を確認することもなく、「結論として輸入が出来ません」と言い放ちました。それが絶対にありえないことを理解していた弊社の輸入担当のリュウが押し問答し、事なきをえて通関に至りました。既に合法であることが明確な部位の製品であってもこれですから、正直、前例事なかれ主義のこの国で医療目的であっても大麻が解禁されるには、とても高いハードルがあることでしょう。弊社が日本で初めて輸入を行ったアーモンドミルクでも、担当官や厚生労働省、農林水産省と同じような押し問答がありました。逆にいえば、日本の終わらない利権体質を考えるとき、強く警戒されるくらいに健康や環境に魅力的な素材であるとも解釈できるわけで、私たちのチャレンジは続きます。最後に、私が創業した一九九九年から私の中で変わらないで注目してきた「人々を幸せにする素材リスト」をご紹介します。
麻(ヘンプ、マリファナ)・絹(シルク)・塩(天然塩)・竹・炭(創業の品です)・貝殻や珊瑚……これらは、持つだけで人のエネルギーを高めることが弊社のお客様ならご理解いただけると思います。それが何を意味するかは、使った人にだけわかります。どうぞ引き続きご注目ください!