某企業にて朝から深夜まで成果をあげることに夢中になっていた28歳のある日、母が倒れ、重度の高次脳機能障害と左半身麻痺で24時間要介護状態となりました。

医師からはリハビリしない病院への入院を勧められ、父は返答に窮していました。医師は父への説得を諦め、私に「お母様は生きてはいますが、この先、改善は見込めません。あなたには未来もあるのですから」と伝えました。今なら優しさからの説得だと分かりますが、その時はそうは思えませんでした。私はまだ何もしていないと思った次の瞬間、「私が仕事やめます。私には命ってそんなに簡単に諦めていいこととは思えないのです」と口から出ていました。命の学びが必要な私へ神様が言わせたのでしょう。

こうして私の人生は大きく方向転換しました。全くの想定外で、母の退院前に父が末期がんで亡くなり、弟と私の２人で重度の24時間在宅介護状態に。必死のリハビリと生活の毎日のなか、私は最愛の息子を妊娠しました。が、私は葛藤の最中にいました。どんなにがんばっても車椅子とベビーカーを同時に押すことはできません。重度の高次脳機能障害で待つことができない左半身麻痺の車椅子の母と、育ち行く赤ちゃん。悩むなか、私の妊娠を母の口から聞いた医療機関から一本の電話が入りました。「今後の介護はどうされますか。施設を探すなら急がないといけません」その瞬間張りつめていた何かが切れ、そこにヘルパーさんがいることも忘れ、大声で泣き崩れました。主たる介護者が不在となれば命に関わるため、医療機関には責任問題もありますから、当然の連絡だったと思います。が、涙は止まりませんでした。彼女は、ただ側で一緒に涙を流しながら私の涙が尽きるまでそこにいてくれました。ただ寄り添うということの力を、このときほど感じたことはありません。

その後、無事に息子は生まれ、育児と在宅介護の同時並行で命について多くを学ばせてもらいました。在宅ホスピスという形で母を見送るまでの５年間、モノの側面で色々助けてくれたプレマで働くことになるとは、想像していませんでしたが、ご縁とは不思議なものですね。もしかしたら私と同じような状況の人がいるかもしれないと思い、今回、この話を書きました。途方にくれ絶望のなかにいるかもしれません。毎日がその繰り返しかもしれません。でもどうかあともう一日、今日だけと思っても生きてください。人の優しさは頼りになります。何の保証もできませんが、でも、それこそが真実であり希望だと、今、私は信じています。すべての命に笑顔があふれますように。