「子どもは風の子」といわれたほど、子どもというのは元気で冷えとは無縁の存在だったはずですが、最近はそうでもなくなってきたようです。
アレルギー症状のお子さんに、顔色が悪く、見るからに虚弱体質っぽいのに、腹筋だけが発達しているように見える子がいます。東洋医学では「腹皮拘急(ふくひこうきゅう)」といって、腹直筋だけが過度に緊張している状態は、内臓が冷え切っているか、かなりの精神的ストレスを疑います。冷えたお腹を守るために、筋肉が熱を産生しようとして発達したのではと考えるのです。猛暑の影響もあって、公立の小中学校でもエアコン設置率が半数に上ります。冷房の効いた屋内で過ごし、屋外で遊ぶことが減った。さらに家に帰ればアイスクリームにジュースとくれば、冷えないほうがおかしいくらいです。身体を温めるための治療を施しても、冷える原因が日常にあれば、治癒は困難と言わざるを得ません。
家族ぐるみの情熱
治療効果が出にくい場合によく聞いてみると、親が子に言うことを聞かせられていないことがあります。お風呂に浸からない。冷たい食べ物・飲み物をやめられない。なかには「やめなさいとどんなに言ってもやめなくて困っています」と親御さんが訴えてこられることも。しかし、アイスクリームは降って湧いてくるものではありません。そもそも食べるのをやめないのは、家にあるからであり、親が買うのをやめればいい。だけど買わずにいられないのは、実は親も欲しがっているから。冷たいものに関しては、親がやめない限り子もやめません。子どもの将来のため、家族ぐるみで情熱を注いであげてほしいところです。
うちの18歳になる長男がまだ3歳くらいのころ、大型スーパーマーケットに行ったときのことです。お菓子売り場で、見慣れないキラキラしたパッケージが並んでいるのを前に、彼の目も輝いているようでした。「今日は、なんでも一つだけ好きなのを買ってあげるから選んできていいよ」と伝えました。カラフルなもの、ピカピカしたもの、散々悩んだ挙句に、「これ!」と持ってきたのは、一昔前のものかと思うようなパッケージの「胚芽ビスケット」でした。この年齢で善悪の判断はありません。好奇心はあっても、「一つだけ」と言われて、キラキラの誘惑に冒険するより、日常で目にするのに近しいものに親近感を覚えたのでしょう。
子どもは成長すれば、親の思うようにはならないことも出てきます。うちの長男も最近では学校帰りにファストフードにも行くこともある。けれど続けて行くことはなくなりました。あのときキラキラしたものを「買ってあげようか」と安易に買い与えずに、本人の判断を信じて待ってあげられてよかったなと、いまでも思っています。
感情は出していい
禅の言葉に「平常心是道(へいじょうしんこれどう)」とあります。日常の心がけが、すなわち仏の道であるという意味です。平常心といっても心が動かないことではなく、感情のままに心が揺れても良いし、感情を素直に表現しても良い。ただしいつまでもとどまらずに、あるべき場所に戻ってくる。それが「平常心」ということなのでしょう。感情が熱くなると書いて「情熱」。本気になることで、心も体も冷えがなくなってくることでしょう。