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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

部分と全体

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「大根の皮に栄養があるって聞いて、皮をきんぴらにして食べてる」。先日、こんな会話がありました。栄養のことや健康に良いということを知って、すぐ行動に移すというのは素晴らしいことです。昨日までの自分より着実に一歩前進と言えるでしょう。

ここで一言付け加えるとすれば、皮だけ食べるよりも、皮ごと食べるようにするともっと良いということでしょうか。栄養が多いのは皮の部分だけではなく、常食している本体部分はもちろん、葉にも栄養は豊富なのですから。

一部分という認識

「全体は部分の総和にあらず」という言葉があります。バラバラにした部分を寄せ集めても、全体として元々あるものとは本質的に異なるということです。
大根の栄養でいえば、中心部にビタミンCが多く、ジアスターゼやプロテアーゼといった酵素が消化を助けてくれる。皮の部分に近づくほどビタミンCと食物繊維が多く、さらには葉には葉酸やカルシウムが多い。これらの成分をバラバラに摂っても、大根一本を食べるのと同じにはなりません。ほかにもごく微量の成分があるだけでなく、なによりも大根一本には自然のなかで育ってきたままの生命力がある。だから、できるだけ丸ごと食べるほうがより良いということ。まずは大根一本から何通りの料理ができるか、例えば煮物には皮を剝かずにそのまま使えばいいし、包丁の入れ方でいろんなアレンジができる、捨てられがちな葉っぱを炒めてみようなどと考えてみるのも楽しそうです。

部分ごとで見ていると、それだけでは不足している別の部分が気になるものです。部分同士で「これと、それ」と足していくものを、「これも、それも」とあわせて、全体だと「これ」も「それ」も「すべて」ということになる。部分から集めていくのではなく、全体から部分へと見ていくようにするといいでしょう。
これと同じことが、私たちの人生にも言えそうです。部分部分をバラバラに理解していても、全体としての存在を理解できるものではありません。

このところ、たった一言の失言からすべてが台無しになってしまうようなことが見受けられます。常に緊張感を強いられるようで、迂闊なことが言えなくなってしまいました。もちろん、失言そのものに訂正されるべきところはあるでしょう。ただ、その前後の文脈とか、話の流れもあるでしょうし、なによりもその一言でその人がこれまでにやってきた功績までもが否定されるものでもないように思います。一人の人間は、一言一言の言葉の組み合わせだけでできているものでもありません。

いま目の前にある風景を見てみて、これを撮影した一枚の写真と比べてみます。似たようには見えても同じではない。目の前の風景には奥行きがあり、空気感があります。さらにはこの一枚の写真をパズルのようにいくつかの部分に一旦裁断してしまえば、後からこれを組み合わせても違うものになります。このパズルの一片のピースだけを見て、すべてを見たような気になっていることはないでしょうか。それは誤解でしかありません。わかった気になってはいても、実際にはわかっていないことがあると認識しておく必要があるでしょう。

変わらないもの

禅の言葉に、「道無古今」とあります。道には古いも今もないということ。人の道理には古いも新しいもありません。本当に大切な筋道というのは変わらないものです。なんでも細かく見ていく傾向にあるなかで、ものの見方の本質を忘れないようにしたいものです。

全体とは、部分の集合体でありながらも、質的には異なるもの。いつの時代も変わらない道理と知っておきたいですね。

- 鍼療室からの伝言 - 2025年11月発刊 vol.218

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