ある本に、こんな言葉がありました。
「誰一人として、同じ人生を歩むことはない。どの人も、どんな人生も一冊の本が書ける内容の、特別な人生」だと。
今月号より、「それぞれの転機」という連載をスタートさせていただきます! キャリアコンサルタントのまゆこです。「それぞれの転機」では、ご縁あって知り合うことができたいろいろな方の人生の転機を、インタビューし、お届けします。おそらく誰しも、一度は人生の岐路に立ち、悩んだり迷ったりして進めなくなったことがあると思います。そんなとき、誰かの経験談に救われたことがあるのではないでしょうか。誰かの実話、同じような経験をした人の話に、私は何度も勇気づけられ救われました。
取り巻く環境が目まぐるしく変化し、働き方や生き方が今まで以上に多様化していくなかで、誰かの生き方が誰かの参考になるはず。私自身もいろんな人生の物語を聞きたいと、キャリアのインタビューを届けることを思い描いていました。そしてそれを言葉にすることで、思わぬ形でこの企画が実現しました。
キャリアコンサルタントとして、さまざまなお話を聞いている際にも、「過去のそのとき、どうやって決断しましたか」「こんなことをしたいけれど、そういうキャリアの方はいましたか」「この年齢でも仕事が見つかった方はいますか」といった質問は多く、同じような方がいることがわかると、安堵されたり、「自分にもできるかな」「やってみようかな」という気持ちが出てきたりして、お会いしたときより表情が明るくなるのを目の当たりにしています。
私自身、今年、人生で初めて骨折をしました。それも自宅で、笑われるような出来事で足をぶつけました。痛みはさほどなく、打撲と思いつつ整形外科へ行くと、骨折! 嘘でしょ!?と思いましたが本当でした。どのくらいで治るのか、仕事やいろんなことが滞ってしまう、たくさんの人に迷惑をかけてしまう、なぜ骨折してしまったんだろう、あのときあの行動をしなければ……と、落ち込んだり、不安になったりして、考えが止まらなくなりました。
そんなとき、救ってくれたのもまた、誰かの経験談でした。著名人や、一般の方の骨折体験をたくさん読んで、同じことがあった人もこうやって乗り越えてまた活躍している。怪我やこの時間から得られることも必ずある。起きてしまったことは絶対に変えられないから、それを考えても意味がない。すべてはその出来事を自分がどう捉えるかだと、気持ちを切り替えていくことができました。そして、経験は人を救うという確信が強まりました。
すでに何名かの方にお話を聞かせていただいていますが、インタビューの間、鳥肌が立ったり、目頭が熱くなったりし、こんな素敵なお話が聞けるなんて、なんて幸せなんだろうと感じながら聞いていました。次号より、そのお話をお届けいたします。そして、冒頭の本の言葉の通り、読んでくださっているすべての方の人生も、特別な物語であるということを思い出していただければ嬉しいです。
職業という視点でみると、AIに脅威を感じる人も多い昨今、「経験」は、生きている人間にしかできないことであり、経験とは最も価値があることなのではないかと個人的には思っています。
ある人気小説家が、魅力的な主人公を描く秘訣について、長所だけでなく短所があることや、弱みや逆境があってこそ、人に愛され人生が面白くなり輝いていく、と言っていました。生きているとさまざまなことがありますが、すべてに意味があり人生を輝かせるチャンスなのかもしれません。
これからお届けするさまざまな物語から、それぞれの一度きりの人生を、より自分らしく生きるヒントを見つけていただけることを願って、この連載を始めます。
