何事も崩壊するときは、外部からではなく内部から壊れます。歴史的に数々の帝国や文明が崩壊し滅亡していった原因は、その国の内部にありました。人間も同様で、すべての不幸や病気の原因は、自分自身の内部にあるのです。食を選択する前提としてそのことを押さえておかねばなりません。
四方を海に囲まれた島国日本では、食文化として魚介類、海藻などの海の恵みが豊かに活かされてきました。「人の母なる水」と書いて「海」。そもそも、いのちは海から誕生しました。身(いのち)の原点である海には、命のための栄養が豊富です。海のものは健康的に生きるうえで重要な栄養バランスを提供してくれます。有効なたんぱく源が含まれることもさることながら、特に体に欠かせないミネラルが豊富に含まれており、日本人にとっては吸収しやすい、効率的なものといえます。
日本人に不足しがちなカルシウム
日本は火山地帯の火山灰土壌なので、カルシウムやミネラルの含有量が少ない軟水地域。したがって硬水地域と比べて材料や調理によって得られるカルシウムは少なくなります。また、環境汚染や農薬、化学肥料等の影響で、農作物に含まれるビタミンやミネラルが昔の野菜に比して少なくなっていることから、伝統的な食べ方をそのまま踏襲していたのでは、現代人はミネラル不足に陥ります。さらに現代人に多い白砂糖の取りすぎが、からだを生理的に冷やすばかりか、白砂糖が分解されるときに大事なビタミン、ミネラルを消費し、結果としてさらなるミネラル不足になります。
日本人は伝統的に海のものからカルシウムやミネラルを得ていました。現代では、カルシウム不足を補う食品というと牛乳といわれます。しかし、牛乳はカルシウムの含有量は多いとされていますが、体への吸収で考えると効率が悪いことがわかっています。むしろ、ひじきやわかめなどの植物(海藻)にカルシウムが豊富に含まれています。
カルシウムは血液中にありますが、骨にも貯蔵されています。血液や細胞にある微量のカルシウムは健康に決定的な影響を与え、それが足りなくなれば骨からカルシウムが溶け出ます。いわば骨はカルシウムの銀行、わが身を削って緊急事態を補うのです。