はじめまして。「影響力のスイッチを入れる専門家」賀集美和です。どうぞよろしくお願いします。昨年8月号の本誌特集記事「答えのない時代に感性・感覚を活かす」でご紹介いただきました。覚えてくださっている方もいるかもしれませんね。今月はまず、自己紹介から始めたいと思います。
影響力って特別なもの?
「影響力」というと、ずば抜けた能力をもつ特別な人を思い浮かべることが多いですよね。一部のセレブやトップアスリートなどスター的な人物。それとも、敏腕カリスマ経営者などでしょうか?
私にとっての「影響力」はすこし違います。みんなが生まれもっているもの。がんばらなくても発揮されて、あなたも周りもよくなっていきます。あなたがただいるだけでその影響はまわりに伝わり、まわりの人も自然と良くなっていくもの。それが私にとっての「影響力」です。
そのような考えになったのは、27歳で飛び込んだベンチャー企業での経験が影響しています。はじめは慣れない業界、慣れない仕事。連日ハードワークで大変でしたが、成長できている実感とやりがいがあり充実した日々でした。
ところが、リーダー育成を任されてしばらくして、大きな大きな壁にぶつかっていることに気づきました。リーダーの仕事は、一人ひとりの力を発揮させることです。しかし、リーダー育成の対象だった当時のマネジャーたちは20代前半の若者たち。人を導いた経験が足りませんでした。そのため、現場スタッフへの影響力が弱く、衝突や苦労のオンパレード。リーダーシップに良いといわれるものは、海外のもの、最先端のものといろいろ試しましたが、思うような結果は得られません。私自身も影響力を発揮できずにいました。
「影響力」に向き合っても答えが見つからない。そんなとき、ある達人に出会いました。その人は自然体で、いつもリラックスムード。なのに、一瞬で相手の能力を引き出します。どうしてそんなことができるの? 私はその秘訣がどうしても知りたくて弟子入りしてしまいました。すると、私が思っていた影響力と、その達人が教えている影響力はまったく別物だったのです。
調和と成長を生み出す力
「まわりを引っぱっていく」。私はそれが影響力だと思っていたんです。ですから、テクニックやリーダーとしての考え方を教えていました。ところが、達人はそれらをなにひとつ教えません。達人の教えは、ただひとつ。「感じて~(Just feel)」。バリバリ仕事をがんばってきた私には意味不明。なぜ感じることが、自分の仕事に大事なのか最初はまったくわかりませんでした。
それでも、相手も自分もよくなる影響力の秘訣がどうしても知りたくて、達人の教えを実践し続けました。すると、私自身が変わりだしたのです。そして、意見がぶつかることが多かったマネジャーや上司が、気持ち良く動いてくれるようになりました。仕事をひとりで抱え込むことが減って、まわりも私も笑顔が増えていきました。
強いリーダー像ではなく、調和と成長を生みだす「しなやかな影響力」。それこそが、まさに私が求めていたものでした。立場に関係なくお互いが違いを活かし、力を出しあえる。失敗をおそれず、安心して思ったとおりチャレンジできる。だから思い描いたことがスッと実現する。仕事も家族関係もよくなる。そんな人が増えたら、バラバラだった人々の心が一体になってより良い地域社会、国、世界になる。そんな思いが芽生えたのです。
それが13年前。それ以来、多くの出会いがあり、仲間が増え、その人が生まれもっている「影響力」のスイッチを入れてきました。次回から毎月楽しく、そんな「しなやかな影響力」のヒントをお伝えしていきますね。