新型コロナの予防に役立つといわれる「東洋医学」。
そもそもどんな医療行為なのですか?(40代会社員)
A.病因に即して、身体のバランスを改良します
答える人 プレマ株式会社 お客様コンサルティングセクション 岸江 治次
新型コロナウイルス感染症患者の急速な増加で、各地で医療崩壊が叫ばれています(2020年5月10日現在)。日本の病院が施している医療行為は、その多くが欧米において発展した「西洋医学」にもとづく処置。「対症療法」を根幹としているため、まずは症状を細かく分析し、悪い部位を明確化していきます。病状を“パーツ化”して、対象物を除去していくのです。その改善のためには投薬や手術が採用され、病名や症状に即して、手段が無数に用意されています。それこそ西洋医学の病名に関しては、ひとりの医者が覚えきれないくらいの数があるともいわれています。しかし、それほど系統立てられた西洋医学でも対応できない症状は存在し、抗生物質の効かない「MRSA」などが院内感染すれば、たちまち医療崩壊につながります。また薬による改善効果よりも副作用のほうが大きい場合もあり、逆に身体の健康を損ねてしまう可能性もあります。
そんな西洋医学一辺倒だった日本で、にわかに注目されはじめたのが「東洋医学」です。東洋医学とは、その名のとおり東洋を起源とする伝統医学で、チベットの「チベット医学」、インドの「アーユルヴェーダ」、韓国の「韓医学」などが知られています。日本でもっとも有名な東洋医学といえば、中国の漢の時代に伝播した「漢方」でしょう。
そして東洋医学と西洋医学の違いは、病気へのアプローチにあります。西洋医学が悪い部位を明確にして医療行為を施すのに対して、東洋医学は自然治癒力を高めることを大事にします。すべての病気は、体内や日々の生活のバランスの崩れに起因するという考えにもとづき、それらをととのえることで症状の改善、そして病気の予防を試みようとします。西洋医学が部位(パーツ)の除去を主目的とすることに対して、東洋医学は人間の身体をトータルに見て原因を追求し、その治癒を目指していくのです。その治療には、鍼灸や薬膳、あん摩などの手法が採用されます。
東洋医学では「気」「血」「水」のバランスが崩れると身体の不調をきたすといわれるため、これらをととのえる必要があります。「気」とは気の流れで、別名・経絡ともいわれるもの。「元気」という言葉は、元の気、すなわち生まれたての赤ちゃんのような気、(産声をあげるくらい)元気な状態であることを表しています。気の流れがあるからこそ、体内の臓器と各細胞がうまく連携するといわれており、これをスムーズにするための手法に「鍼灸」「つぼ押し」などがあります。
「血」は血の流れのことで、これには食べ物が重要になってきます。「医食同源」「薬食同源」の言葉のように、食は病気の予防、治療にもつながります。もちろん生きるためには、「水」も必要です。これら東洋医学の基本に則って、自分の身体と日常生活を整え、病気の芽をあらかじめ紡ぐことが、今、注目されているのです。
新型コロナウイルス感染症に関しても、まずは罹患しない身体をつくることが大切。「気」「血」「水」のバランスが崩れれば、免疫力が低下してしまい、感染リスクが高まります。もちろん、適度な運動と十分な睡眠も必要ですが、 西洋医学に頼るばかりでなく、「血」「水」 を意識して、まずはきちんと食べ、「気」を補う東洋医学にも目を向けたらいかがでしょうか。