産む場所を選べない新しい理由
病院で院内感染があいつぐ事態を受けて、病院で産むのを避けて助産院を選ぶ妊婦さんが増えているとのニュースが少しずつ報じられています。
妊娠は病気ではありませんが、妊婦は定期的に健診を受けるようすすめられ、体調を含めリスク管理をするよう求められます。そんな妊婦全員へのPCR検査を始めている都道府県もあれば、院内感染を防ぐために妊婦を含むすべての入院患者にPCR検査を実施している病院も。いずれにせよ、5月の時点ではこれらは少数派です。
出産希望者が増えているとされる助産院で、希望する妊婦全員がPCR検査を受けられるところは、現状ではかなり稀だと思われます。よって助産院で院内感染が起きれば、出産できる場所が減ることにもつながると心配する助産師さんから、みなが安心して出産に臨めるよう、検査の仕組みを作ってほしいという声もあがっています。
さらには別の問題も生じています。さまざまな理由から、妊婦を受け入れられなくなった病院が、助産院に妊婦を紹介する動きもあるといいます。受け入れない助産院もあれば、受け入れて満床になる助産院もあるようです。
これまでは、妊婦自身に医学上の理由などがなければ、自分が出産する場所として選べるパブリックな場所は、大きく分けると3つありました。大きな病院、個人のクリニック・産院等の診療所、助産所のなかから、自分の産みたいスタイルにあった場所を選ぶのが理想でした(自宅などプライベートな選択は省いています)。
積極的に産んでいきたい人は、積極的に産みやすい場所を選びます。助産院で産むという選択は、自力で産めるからだを作る積極性ともセットです。助産院で産もうとしたけれど、諸事情により病院に転院になる妊婦はつねに存在しますが、病院から助産院によんどころない事情で転院させられる妊婦が出てくるというのは、かなりレアな事態ではないでしょうか。
リスクのとりかた
助産院の助産師からも、たとえば抗生剤の点滴、出血が多い場合の点滴処置など、必要に応じた医療処置を受けられます。が、病院の医師がおこなうほどの積極的な医療介入はできませんし、たいていの妊婦が望みません。前提がそうなので、助産院の助産師と妊婦のあいだには、病院の医療従事者と妊婦のあいだとはまた違う関係性も生まれています。医師と妊婦のあいだには、「産ませる/産ませてもらう」という関係が生じやすく、助産院では、「助産する/産む」という関係が生じやすい。安産をめざすのは共通していますが、病院と助産院では、妊婦が受ける指導が違います。病院なら医療介入により産ませることができる以上、産むためのからだづくりそのものが違ってきます。その違いが、妊婦が救急車で助産院から病院に搬送されるリスクを高めることにもなりえます。
だから、からだを作ってきていない妊婦を、リスク管理のために受け入れない助産院もあれば、医療崩壊のリスクと天秤にかけ、助産師としての経験や技術、代替医療ともいえる安産や助産のための手立てを駆使する前提で、満床になるまで受け入れる助産院もあるのでしょう。
あらゆる安全性について、素人であるわたしは語ることばを持ちません。が、出産は一生涯で数少ない機会。とにかくすばらしいお産になりますように……。